第2章 ヘリオス島動乱(前編)

ZAC2110年世界情勢

勢力図

主要各国保有ゾイド

へリック合衆国

  • ウルトラザウルス…1
  • 凱龍輝…11
  • ライガーゼロ…6
  • ファイヤーフェニックス…443
  • アロザウラー…731
  • ゴルヘックス…987
  • レイノス…856
  • ディスペロウ…1245
  • レオゲーター…2301
  • ディメトロプテラ…1002
  • エヴォフライヤー…3039
  • カノンダイバー…1783
  • レオストライカー…2998
  • スナイプマスター…1428

ガイロス帝国

  • ジェノザウラー…21
  • セイバータイガー…33
  • レッドホーン…29
  • ライトニングサイクス…99
  • ヘルディガンナー…121
  • ヘルディガンナーOS…50
  • ブラキオス…112
  • ウオディック…364
  • レドラー…547
  • ザバット…1286
  • シンカー…997
  • レブラプター…565

 時はZAC2110年、約8年にも渡り中央大陸を支配し世界を脅かしたネオゼネバス帝国も滅び、名を改め新たなる道を歩み出したへリック合衆国も、軍事力は他の追従を許さない規模であるものの、大統領ロブ・ハーマンの内政重視政策により他国を脅かすほどのものではなく、世界はようやく落ち着きを取り戻しつつあった。
 しかし一方、へリックに唯一対抗出来うる力を秘めるガイロス帝国軍は壊滅的被害を受けているが、強力無比なOS搭載ヘルディガンナーの実戦配備を進めるなど不穏な動きを見せつつあった。

 また、北、南、西、東各大陸の諸勢力も中央の動乱を尻目に力を蓄えており、この束の間の安泰もいつまで続くものか全く予断を許さない状態であった…。

極東の島国ヘリオス

 中央大陸の遥か東方、北方大陸と東方大陸に挟まれた洋上に浮かぶ小さな島「ヘリオス島」…、八方を海に囲まれたこの小さな島国は、これまで外界との交流を断ち、独自の文化を育みながらも平和な日々を過ごしていた、…そう、8年前にあの男がやってくるまでは…。

 ーハンス・シュテルマーー、彼はかつてゼネバス皇帝に息子同然に手塩にかけて育てられた超優秀な司令官で、中央大陸戦争でゼネバス帝国がへリック共和国に敗れ、ガイロス帝国に接収された後は、その力をガイロス皇帝に買われ、ガイロス軍の司令官として卓越した手腕を発揮した。
 シュテルマーは強者を好むガイロス皇帝に気に入られ、ガイロス帝国内に置いて、ゼネバス人としては異例の地位を手に入れ、彼はその権力を持ってゼネバス人の身柄の安泰に務めると共に、ゼネバスの遺児、ギュンター・プロイツェンの権力掌握を助けるなど、ガイロス内のゼネバス系人の為に心血を注ぎ、英雄として尊敬を集めていた人物である。

 しかし8年前、ギュンターがネオゼネバス皇帝を自称しガイロスに反乱を起こした際、ギュンターはシュテルマーにも協力を要請したが、シュテルマーはそれは無謀であると異を唱え、麾下の純粋なるゼネバス人で構成された屈強なる精鋭部隊を率い、どこかへ姿をくらましたのであった。
 もしも彼の精鋭がギュンターに加担してくれていたら…、それ以来ネオゼネバス将兵の間ではシュテルマーは裏切り者として忌み嫌われる存在となっていた。

 ギュンターと決別した彼はその後どこへ向かったのか…、彼は麾下の約300機からなる精鋭ゾイド軍団を5機の超大型輸送船「ホエールキング」に分乗させ、遥か極東にあるここヘリオス島へと飛来したのであった。

 飛来したシュテルマーをヘリオス島人は外敵とみなし攻撃したが、近代戦闘ゾイドで武装した彼に敵うはずも無く、ヘリオス島は瞬く間に彼の手に落ちた。ヘリオス島民はこれに憤慨すると共に近代戦闘ゾイドの脅威を思い知り、自分たちもこれを手にする必要性を痛感し、今はこの外敵に屈服してでも近代戦闘ゾイドの製造技術を学ぼうと決意した。
 こうして利害が一致した両者は協力し、ヘリオス島は見る見る近代的な国家へと成長しつつあった。

 これは、そんな平和を謳歌していた小さな島国の島民が世界の荒波にのまれていく様を描いた戦いの物語である、ヘリオス島民を待ち受ける未来とは如何に…? それはまだ誰にもわからない…。

ヴォルフが来た日

 2109年春、そう、あのネオゼネバス帝国終焉の時、中央大陸を脱しヘリオス島へ向かったヴォルフ・ムーロアはその後どうなったのだろうか。

 彼とその護衛を乗せた5機のウオディックは中央大陸を脱しヘリオス島へ向かった、途中野生の海竜の襲撃や嵐による遭難などにより護衛は1機、また1機と脱落していったが、満身創痍の状態ながら、からくも皇帝専用機を含む2機のウオディックはヘリオス島へ到着したのだった。

 来島したヴォルフは驚いた、噂によればヘリオス島は文明の発達も遅れ、知性の無い野蛮な野人が住む取るに足らない島国と聞いていたのだが、どうして、見る人々は皆身なり正しく、知性あるりりしい顔つきをしている。
 ヴォルフはふと、以前地球人の冒険家がこの島について評した書物を読んだ事があるのを思い出した。地球には「日本」と言う小さな島国があるが、かつて日本は取るに足らない弱小国家であった、しかし、その国の人々は勤勉で外国の文化を次々に取り入れ、ついには「大日本帝国」と言う一大帝国を築くに至り、世界列強と覇を争うまでに上り詰めたと言う…、その冒険家によればヘリオス島はその日本に似ていると言うのだ。

(なるほど…、シュテルマーはその大日本帝国伝説を信じ、この島を野望の拠点に定めた訳か…、しかし、これなら伝説もあながち間違いではないかもしれんな…)

 ヴォルフの直観がそう思わせた。

 ヴォルフはまずこの国についてと、シュテルマーの居場所について探るため、賢そうな男を捕まえて尋ねた、純金造りの懐中時計を渡すと男は快く答えてくれた、シュテルマーが教育したのであろう、片言ながらゼネバス語も通じ、何とか情報を得る事に成功した。

 男によると、この島は元々「天皇」と言う唯一絶対の存在を頂点に、それを支える「幕府」と言う武家が支配する国家であったと言う、そして、襲来したシュテルマーはその幕府を乗っ取り、さらに当時の天皇を強制的に廃してある人物を新たなる天皇に立てたのだと言う、その天皇は名前は愚か姿を見た者さえいない謎の人物だと言う。
 そして、幕府を乗っ取ったシュテルマーは大将軍としてこの国を独裁し、この国の名を「真ゼネバス国」に改め独裁体制を敷いているとの事であった。

(何が真ゼネバスだ! ゼネバスを名乗る事を許されるのはもはやこの世に俺しかいないのだ!! シュテルマー…、やはり奴だけは断じて許せん…!!)

 男によるとシュテルマーは「ドエ」と呼ばれるこの国の首都にあるドエ城にいると言う、激しい怒りを胸にヴォルフ一行はシュテルマーに面会するべくドエ城を目指した。

対面 シュテルマー

 ヴォルフ一行は幾日もの旅路を経てようやくドエ城へ辿りついた、一行は途中目にしたこの島の風景にますます驚きを深めていた。
 農村部は未だ噂通りで近代的な文明は見当たらなかったが、都心部に近づくにつれ道路は舗装され車が行きかい、巨大な工場からは黒煙がもくもくと立ち上がっているのが見える。

 わずか8年でここまの発展を実現させるにはよほどの天才的内政手腕を持った指導者でなければ不可能だ、しかし、シュテルマーは軍人であって政治家ではない、それは、この国の住人の強国を夢見る強い熱意を物語っているのだ。

 また、何人もの原住民に触れる度にだんだんとこの国の住人についても分かってきた、この国の住人は皆、「天皇」を神の如く無条件に崇め、絶対の忠誠を誓っているのだ。

(この忠誠心、俺に対するネオゼネバス臣民のものに似ている、まさにゼネバス再興の地にふさわしいかもしれん…)

 ヴォルフはそんな事を思い始めていた、全く知らない地であるはずなのに、生まれ育ったガイロスにいた時よりも心地よく感じていた。

「止まれ! 何者だ!!」

 ドエ城の城門で一行は門番に銃剣を突き付けられていた。

「無礼者! 貴様らゼネバス軍人であろう、余の顔を忘れたか!! 我はネオゼネバス帝国皇帝、ヴォルフ・ムーロアであるぞ!!」

「はあん? ヴォルフだと? フン、下らん嘘をつきおって、ヴォルフは死んだ! そんな事はもはや世界中の子供にさえ知れ渡っている事だ、しかも忌々しい偽帝ヴォルフの名を語るとは許せん! ひっ捕らえてくれる!」

 何という事か、一行は捕えられて城の牢屋に閉じ込められてしまった。

 数刻後、ヴォルフ一行が入れられた牢の前に、ネオゼネバス皇帝を名乗る男が居ると聞きつけたシュテルマーが姿を現した。ヴォルフは約8年ぶりの対面となるこの憎むべき男を鋭い目つきで睨みつけた。

「久しいなシュテルマー、まさかこうして再び会いまみえる事があろうとは思わなかったぞ、俺はあなたを尊敬し憧れていたのに、なぜ父を助けてくれなかった! 貴様のせいで父は…、恨んだぞ、殺してやりたいほどにな!!」

 シュテルマーはヴォルフの凄まじい殺気も全く意に介さないかのように、眉ひとつ動かす事無く鉄仮面のような冷徹な表情でヴォルフを見据えていた。

「ほう、どうやら本物の様だな、ヴォルフは死んだと言うへリックの発表は嘘だったか、…いや、なるほど、死んだのはガルドか、惜しい男を失ったものだ…、して、そのネオゼネバスの皇帝閣下様が我が真ゼネバス国に何の用で参られたのですかな?」

「おのれ…、この俺を前にゼネバスを名乗るとは、かつてゼネバス絶対の忠臣として尊敬を集めたシュテルマーは完全に死んだのか、ゼネバスを名乗る事を許されるのはもはやこの地上で俺しかいないのだぞ!!」

「これは心外ですな、私は昔も今もゼネバスへの忠誠心は変わらん、だが、その対象は貴様では無い、真にゼネバスの後継者たるにふさわしいのはあのお方を置いて他にはないのだ、私に言わせれば妾腹のギュンターと貴様、邪悪なるガイロス人の血が色濃く混ざった臣民からなるネオゼネバスなどまがい物に過ぎん」

「あのお方…、天皇とやらの事か、一体何者なんだ! 早く俺をここから出してその者に会わせろ!」

「口を慎みたまえ、貴様は今や敵国に捕らわれた哀れな敗軍の将に過ぎんのだ、生かすも殺すも私の一声で決まる、言葉には気を付けるのだな、まあ、すでに貴様の処分は決まっているが、一応あのお方のお耳には入れておいてやる」

 そう言い残してシュテルマーは牢獄から出て行ってしまった。ヴォルフは絶望し鉄格子にしがみ付いたままがっくりとその場に膝をつくのだった。

あのお方

「ヴォルフ・ムーロア、出ろ!」

 重々しい鉄格子が開かれ、ヴォルフは言われるままに牢の外へ出た、そこにはシュテルマーの姿もあった。
 幾日も牢に閉じ込められ、頬はこけ、髭も伸び、身も心もすっかりやつれ果てたヴォルフは力なくシュテルマーに問いかけた。

「俺を、処刑するのか…?」

 その問いにシュテルマーは忌々しそうに顔をしかめながら答えた。

「私としてはそうしたい所だがな、あのお方に貴様の事を話したところ、ぜひ一度会ってみたいと仰せになられてな、貴様をこれからあのお方に会わせてやる事となった、あのお方の寛容さに感謝するのだな」

 後ろ手に縛られたままのヴォルフが兵に連れられ拘置所の外へ出ようとした時、これまで彼が収容されていた牢の中から声が聞こえてきた、それは幼少の頃より今日まで、命を賭してヴォルフを護衛してきた親衛隊員の声であった。

「閣下、どうかご無事で…! 我らはたとえどの様な姿になろうとも、ズィグナー隊長と共に閣下を見守っています、ゼネバス帝国に栄光あれ…!!」

 それがヴォルフと親衛隊員との最後の別れとなった、彼らはこの後すぐに処刑されたが、ヴォルフがそれを知り、大いに悲嘆に暮れさせるのはもう少し後の事である。
 こうして最後の家臣まで奪われ、爪も牙も翼も失った竜は、たった一人で新たなる戦いに身を投じていく事となったのである。

 それから護送車に乗せられたヴォルフは天皇がいると言う皇居と呼ばれる場所に連れてこられた。そして、厳かな雰囲気の皇居内を進むことしばらく、やがて奥まった所にある一室に通された。
 その部屋は薄暗く窓も無く、光源と言えば紫色の怪しげな光を放つ行燈が数か所にあるだけであった。そして、部屋の奥には、とばりで覆われた場所があり、両脇には表情一つ変えない見張と思われる男が人形の様に侍していた。そして、とばりの中では何者かが蠢く影が見えた。

(なんと言うおぞましさだ…、奴こそがこの国の住民も姿は愚か名前さえ知らないと言う国家元首「天皇」とやらなのか、父上も初めて大魔王ガイロスに謁見した時はこの様な心境だったのだろうか…)

 さすがのヴォルフもこの異様な光景に圧倒され、緊張で思わず身を固くした。そこへ、少し前を歩いていたシュテルマーがとばり内の人物に声をかける。

「陛下、お望み通り例の者を連れてまいりました」

「おお、待っていましたよ、ではとばりを開いてください」

 とばりの中から聞こえてきた声は女の声の様であった、そして、ヴォルフにはなぜかこの声が初めて聞くものでは無いように思えた、しかし、同時に聞いてはならない黄泉の国からの死神の声でも聞くかのような不快感を覚えたが、その時は自分にもその理由はわからなかった。

 そしてついにとばりが開かれ、仰々しい玉座に鎮座しヴォルフを見下ろす人物が姿を現した。その者は頭には禍々しい冠を着け、怪しげな紫色のローブに身を包み、ヴォルフの目には写真でしか見た事の無い祖父ゼネバスの在りし日の姿と重なって見えた。

 そして、薄明かりに照らされたその顔に目をやりしばらく見つめていたヴォルフは、やがて心臓が止まりそうになるかの様な衝撃を覚えた。

「あ、あなたは…!!!!!!!!!?」

正統なる後継者

「おお、待っていましたよ、そなたが我が兄の息子であるか、何と凛々しい顔立ちじゃ、良くぞ生き残ってくれました、今後は唯一の肉親として互いに手を取り合ってまいろうぞ」

「ば、馬鹿な…!? あなたは8年前俺の軍の攻撃によって死んだはず!!」

「ふふ、あなたは私の死体を見たのですか?」

「いや、それは…、しかし…! あなたはへリック大統領であった人では無いか!! そのあなたがなぜこんな所にいるんだ、しかも宿敵であったはずのゼネバスを名乗るとは!!」

 ヴォルフの前へ姿を現した天皇、それこそはかつてへリック共和国の大統領であり、8年前、ヴォルフ率いる「アイゼンドラグーン」によるニューへリックシティ強襲の際に行方不明となり、へリック、ネオゼネバス両国では死亡したとされていた、ルイーズ・エレナ・キャムフォードその人であった。
 そこへ天皇とヴォルフの会話を忌々しげに顔をしかめながら聞いていたシュテルマーが口を挟んだ。

「フン、分からんか? このお方こそゼネバス・ムーロア様の実子にして、正統なるゼネバスの後継者、ルイーズ・ムーロア様なのだぁ!! 側室が生んだギュンターの息子である貴様とは格が違うのだよ」

「フン、何を馬鹿な…、確かにゼネバス皇帝には一人娘が居たと聞いているが、彼女はへリックとガイロスの休戦協定式の際に乱入したガイロス軍の攻撃によって命を落とした事は、世界中の学校の教科書にさえ書いてある常識ではないか!!」

「ふふふ、驚くのも無理はありません、確かに私の真の姿は歴史上から完全に抹殺されたのですから…、しかし、それはすべてそこにいるシュテルマーが私の身を案じての策略によるものだったのです」

 それからヴォルフは、シュテルマーの口より衝撃の真実を知らされた。

 かつて、へリック共和国に敗れガイロス帝国に囚われたゼネバス皇帝は、ガイロス帝国内での身の危険を感じ、娘のエレナだけでも助けようと、偶然に見せかけ、兄であるへリック大統領の元へエレナを送った、それは、後にガイロスに反旗を翻し、へリックと共にガイロスを倒す為の布石となる人質としての意味もあったと言う。
 しかし、その後ゼネバスは不慮の事故により命を落とす、それは、未だ接収したゼネバス軍を主力とするガイロス軍にとって、ゼネバスの影響力を恐れての誅殺である事は誰の目にも明らかであった。

 これを目の当たりにしたシュテルマーは、へリック内にあってもやがてエレナの身にも同じ災いが訪れる事を察し、彼女を表舞台から完全に消し去る計画の為に動き出す。
 その後シュテルマーは死にもの狂いで働き、ガイロス皇帝の信任を得て、元ゼネバス軍人としては異例の出世を遂げる。そして、あのへリックとガイロスとの休戦協定式典の総指揮者を任される事になった。
 しかし、その休戦協定式とは名ばかりで、ガイロス軍内の元ゼネバス軍人に影響力のあるエレナを後ろ盾とした、へリックが不利な条件を一方的に押し付けるものであった。そこでシュテルマーは一計を案じ、ガイロス皇帝に式典の際に軍を乱入させエレナを抹殺する計略を進言する、ガイロス皇帝は喜んでこれを承諾した。その計略とは、乱入させた軍の指揮官は皇帝の意に反した暴挙を行った反逆者として公開処刑にでも処すれば、ゼネバス人の怒りの矛先をその者に向けさせつつも、ガイロスのアキレス腱であるエレナも抹消できると言う恐るべきものであった。

 しかし、エレナを抹殺するなど無論シュテルマーの本意では無い、彼は同時に裏でへリック大統領とも接触し、計画のすべてを打ち明けた。自分たちの争いの為に、弟の忘れ形見に不憫な思いをさせてしまった事に強い罪悪感を抱いていたへリック大統領は、式典の際にエレナの替え玉を用意する事を約束する。

 かくして計画は実行され、乱入させたガイロス軍司令官と、エレナの影武者の死の元に、エレナは歴史上から姿を隠す事に成功した、彼女はその後整形手術を受け、別人としての人生を歩む事となる、それを知っているのはへリック大統領とシュテルマーだけであった。

「何という…、しかし…! あなたは仮にも元へリック共和国大統領だった人だ、それに、現大統領ロブ・ハーマンはあなたの息子では無いか、自分の国と息子を捨てて己の野望だけに従うとは、とても誇り高く高貴なるゼネバスの正当な後継者のする事とは思えん!!」

「だ、黙りなさい! そなたに好きでもない男と結婚させられ、望まぬ子まで作らされた私の屈辱がわかるものですか!! それに、ロブにはせんべつとしてゴジュラスギガの設計図を残してきました、それに身を持って苦しまされたそなたなら、せんべつとして十分過ぎるものだった事はわかるでしょう? それで母としての義理は十分果たせたはずです、それに、私が共和国大統領となったのも、すべてはいつかゼネバス帝国を名乗る日が訪れる事を信じての事…、そう、そなたの父、ギュンターの様に…」

「チッ! 屑が…!!」

「口を慎みたまえ! 陛下、やはりこの者には反逆の意があります、この様な者を生かしておいても災いの元となるだけです、即刻処断いたしましょう!」

「それはなりません! たった一人の肉親としてヴォルフには私の世界征服の偉業を成す為の心の支えとなってもらいます、ふふ、少しばかり勇ましいのは、父上の血を受け継いでいる証拠じゃ、今後はシュテルマーの下で一将軍として存分に働いてもらいます」

「何を勝手な…!」

 驚きの連続にこれまで気が付かなかったが、だんだんと平静を取り戻して改めてエレナを見ると、その腕には赤ん坊が抱かれているのがヴォルフの目に入った。

「所で、その赤子はなんだ…?」

「ふふ、私とシュテルマーの子、名は裕人(ヒロト)です」

「な…、なに…!!?」

「フッ! これで分かっただろう、貴様にこの真ゼネバス国を継ぐ道は無い、生き延びたいのなら、せいぜい陛下と皇太子様に忠誠を尽くす事だな」

(父上、ズィグナー、俺は、俺は一体どうすれば良いのだ…)

 衝撃の連続に、ヴォルフはただ黙って目の前の親子を眺めている事しかできなかった。

ヴォルフの決意

「ハァ~…」

 ヴォルフは目覚めてから何度目かになるかもわからない深いため息をついた。

 叔母であり、天皇でもあるエレナとの驚愕の対面から早2か月、エレナの意向により、ヴォルフは将軍シュテルマーに次ぐ地位を与えられたものの、この国の重臣はすべてシュテルマーの息のかかった者で占められており、実質ヴォルフには何の権限も無く、ただいたずらに失意の日々を過ごすのみであった。

 また、始めこの国にたどり着いた時は原住民とゼネバス人は良く結託しているかの様に見えたが、やはり原住民は要職に就けないなど不当な扱いを受け、各地でゼネバス人襲撃事件などが起き、一部の地域ではゼネバスの傀儡と化した幕府の転覆を図る動きを見せているとのうわさもあった。

(これではまたへリック人とゼネバス人の様な途切れる事の無い憎しみの連鎖を生んでしまうではないか! 同じ過ちを犯しては、本当にゼネバス人は野蛮な劣等民族と言われてしまう、父上の望んだ国民皆平等の国こそが、新しいゼネバスのあるべき姿ではないのか…!!)

 ヴォルフが窓から空を見上げると、父ギュンターの顔に良く似た雲が自分を見つめているように見えた。

(そうだ、父上も敵国ガイロスにあって、今の俺と似た立場から絶大な権力を手にし、ついには野望を達成したのではなかったか、その父上の血を受け継ぐ俺が、こんな事でめげている訳にはいかん! 見ていてください父上、私は必ずや父上の理想とした国を作り上げてみせます!!)

 静かに決意を新たにするヴォルフ、ギュンターに似た雲は、優しく微笑みかけているような形に変わった。

「北条!」

 ヴォルフが呼ぶと、部屋の外に持していた北条と呼ばれた男が姿を現した、この男、名を北条英機といい、まだ20代も半ばの青年だが、その秘めた才能を見抜いたヴォルフに気に入られ、ヴォルフの側近として原住民としては異例の待遇が与えられていた。
 敵に囲まれているヴォルフにとって、唯一心を開いて話せる人物でもあり、ヴォルフからの信頼は絶対だった。また、北条もヴォルフの人柄を知り、今では絶対の忠誠を誓うようになっていた。

「北条、即刻この書状をタンシュウの桂大五郎とマサツの西郷特盛に届けてほしい!」

「タンシュウの桂…、あの藩は反幕府の中心ではありませんか、あのような所と密通していたのがばれたら、たとえ閣下と言えどただでは済みませんよ?」

 ヴォルフは何も答えなかったが、その強い決意を秘めた目を見た北条は、それ以上何も聞かず書状を携え両名の元へと出かけて行った。

反幕府同盟

「おお! 来てくれたか桂!!」

「フン、幕府は憎いがあなたは皇族だと聞いている、僕らは朝廷にだけは逆らう気はないからな、それに…、書状にあった最強ゾイドと言うのも興味深い」

 ここはドエから遥か南方に位置する「ケイト」と言う都市、その一角にある料亭の部屋を貸し切って、ヴォルフは朝からある人物を待っていた、そして、今姿を現した者こそその1人、「桂大五郎」であった。
 この国は「藩」と呼ばれるいくつかの領地で区切られ、半ば独立した統治が行われているのだが、その中でもとびぬけた力を持つのが「タンシュウ藩」と「マサツ藩」であった、そして、桂はタンシュウ藩の最有力人物である。

 しかし、タンシュウはシュテルマー一派にこの国を牛耳られるのを良しとせず、幕府の転覆を図り、再びヘリオス島を原住民の手に取り戻す事を目的とする反幕府勢力の中心となっている藩であり、既に何度か幕府に戦いを仕掛けては敗れているのだった。

「まあ話は後だ、実は貴公に合わせたい人物がいてな、もうしばらくで到着するはずだ、まあそれまで一杯やろうでは無いか」

 桂は半信半疑のまま差し出された酒を飲み干した、それから2人はポツリポツリと会話を交わしながら酒を酌み交わしていた、そしてしばらくすると、ふすまの向こうからドシンドシンと大きな足音と地響きが聞こえたと思うと、ふすまが豪快に開かれ、恰幅の良い大男が姿を現した。
 彼こそがヴォルフが待っていたもう1人の人物、マサツ藩の最有力者「西郷特盛」である。

「いやー、ヴォルフ殿! 最強ゾイドを見せてくれると言うのは本当でごわすか!? ワシは今ではすっかりゾイドを気に入りもしてな、もっと新しいゾイドが見たくて見たくてたまらんのです」

 西郷は部屋に入ってくるなりヴォルフの姿を見つけると、愛嬌のある笑顔を振りまきつつズカズカとヴォルフに進み寄った、西郷とヴォルフはすでに幕府内で顔なじみなのであった。

 西郷はしばらくヴォルフと無邪気に抱擁し合っていたが、やがて部屋にいるもう一人の人物の存在に気が付きそこへ顔を向けた、桂も変な奴が来たと思いながら酒をすすっていたが、お互いの顔を見た両者は突如飛びのき、腰の刀に手を掛けた。

「これは一体どういう事だ! なぜ幕府の犬の西郷が来るのです!!」

「なぜ畜生タンシュウの桂がここに!? ワシは来る日を間違えたでごわすか!?」

 こうなるのも無理は無かった、タンシュウとマサツはかねてより犬猿の仲として知られ、先にタンシュウが幕府に反乱を起こした際にはマサツが先頭に立って鎮圧したことから、さらに険悪な関係となっていたのである。

「まあ落ち着け、今日は二人にとってこれ以上ない利になる話を持ってきたのだ、まず結論から話そう、俺はゼネバス人とヘリオス島民がいがみ合うのを良しとしていない、だが、ゼネバス人が幕府を牛耳っている限り両者の溝が埋まる事は無いだろう、だから俺は幕府を倒そうと思ている」

「!!!!!?」

 ヴォルフの口から発せられた思いもかけない言葉に、西郷と桂は複雑な思いを胸に顔を見合わせた。ヴォルフはさらに話を続ける。

「桂! 俺の話を疑うのなら今帰ってもらって構わない、西郷! 俺を幕府の反逆者と思うならこの場で切り捨てるがいい!! だが信じてほしい! 俺は本気だ、俺はゼネバスもマサツもタンシュウも無い、この島を一つの国にまとめ上げ、真に世界の列強と肩を並べる強国にしたいのだ!!」

 桂と西郷はしばらくヴォルフの瞳を見つめてその真意を測っていたが、その真剣なまなざしに偽りがない事を認めた。
 タンシュウは言うに及ばず、マサツとてゼネバス人にいいようにされているのを良しとせず、隙あらば幕府を倒し、自分たちがこの国を支配したいと言う想いを秘めている事をヴォルフは北条から聞いて知っていたのである。

「しかしヴォルフ…殿、幕府の力は絶大だ、それは先に戦って敗れた我らが一番身に染みてわかっている、近代戦闘ゾイドで武装した幕府軍にどうすれば勝てると言うのか?」

「うん、確かに幕府軍のゾイド戦力は一見強大に見える、だが、強敵へリックと戦って来た俺からすれば、別にどうにもならないほどの敵では無い、幕府軍にはいくつかの弱点がある、まず第一に、現有戦力は多いが、そのほとんどはシュテルマーが暗黒大陸から引き連れてきたゾイド軍団であり、この国でのゾイド生産力は未だ低く、一度ゾイドを失えばすぐには戦力の立て直しが出来ない点、さらに、そのゾイド生産はマサツやトユウなどの大藩に依存している点、また、そのゾイドはすべて旧ゼネバス帝国製の旧式機であると言う点だ」

「なるほど、一度大打撃を与えてしまえば戦力の立て直しが効かず崩壊に向かって行くと言う訳でごわすな?」

「くだらん! その大打撃を与えられないからどうにもならんのではないか! シュテルマーは我らに弱小小型ゾイドの生産法しか教えてくれなかった、だが幕府軍はレッドホーンやサーベルタイガーなどの化け物を有している、あれをどうやって倒せと言うのだ!!」

「フフ、ならばさらに強力な大型ゾイドをこちらも用意すればいいだけの話…、言ったであろう、幕府軍のゾイドはすべて旧式機であると! シュテルマーはゼネバス製ゾイドのこだわりを捨てきれず、ガイロスでの強化型や新型を連れて来なかった、進歩の無い者に未来は無いのだ」

「簡単に言ってくれるが、その強力大型ゾイドをどうやって手に入れる? あなたとてレッドホーンなどの設計図を持ち出せる権限は無いだろうし、技師では無いからそれを改良する事もできないだろう」

「フッ、既に設計図はある…!」

 そう言うとヴォルフはおもむろにノートパソコンを取出し電源を入れた、そこにはレッドホーンタイプの設計図が表示されていた。

「おお! これは!!」

「何とも強そうでごわすなぁ!!」

「これはレッドホーンの強化プラン、グレートホーンだ、総合戦闘力はレッドホーンより30パーセントはアップしている、これ以外にもまだまだあるぞ、これは俺がネオゼネバス帝国の皇帝だった時、親友のガルドと共に設計した最強ゾイド軍団計画案だ、これさえ実現していたらへリックにも負けなかっただろう…」

 ヴォルフの脳裏に深夜遅くまで、ガルドと共に子供の様に胸を躍らせてこの計画案を作成した日々が思い出された。

「勝てる! 勝てるぞ!! これさえあれば幕府軍に勝てる!!」

「いや! これだけでは無理だ、幕府を倒すにはもう一つ必要不可欠な条件がある、それは、タンシュウとマサツが同盟を結ぶ事だ!!」

「!!!」

 思わずお互いの立場を忘れてヴォルフの話に聞き入っていた桂と西郷であったが、その言葉に我に返り顔を曇らせた。

「大藩と言えどそれぞれが別に戦ったのでは、いくら強力ゾイドで武装したとしても各個撃破されるのがオチだ、だが、2藩が手を取り合えばその力は倍増し、必ずや幕府軍に手痛い打撃を与えられるだろう、そうすれば周辺諸藩も次々とこちらに付くはずだ、今は幕府を倒す事だけを考えるんだ! この国の未来のため、下らん感情など捨てろ!!」

 2人はしばらく腕を組んで目を閉じ考え込んでいたが、やがて桂が口を開いた。

「まあいいだろう、だが、足を引っ張るようなら幕府ともども葬ってくれるわ」

「ふん! それはこちらのセリフでごわす!!」

「よし! 同盟締結だな! 貴公達は後にこの国を救った英雄として語り継がれるだろう…」

 ヴォルフは2人に握手をさせた、2人はぎこちないながらも笑顔を交わす、ここに強力な反幕府同盟が締結されたのである。

ヘリオス島戦争勃発

「大変です! 将軍シュテルマーがマサツ藩討伐の号令を発しました! ヴォルフ様にも出陣命令が下っています!!」

「なに!? ついに動き出したか! しかし早い、早すぎる!! まだ準備は整っていないと言うのに…」

 ヴォルフの暗躍によりひそかに反幕府同盟を結成させてから早4か月、水面下ではタンシュウとマサツは着々と討幕の準備を進めていたが、これをいち早く察知して動き出したのは将軍シュテルマーであった。

 すでにタンシュウでは2機、マサツでは3機のグレートホーン完成の知らせを受けており、ヴォルフも軍事顧問として密かに北条を両藩に送り込んで近代戦闘ゾイドによる戦術を教え込んではいたものの、まだ幕府軍の戦力はそれを遥かに上回るものであった。

「仕方がない…、こうなったらひとまず幕府軍に従ってマサツと戦う振りを見せつつ、隙を見て挟み撃ちにするしかあるまい…、北条! 我らも出陣だ!!」

 こうしてついに、ヘリオス島の覇権をかけて島を2分にしての大戦争が勃発したのである。

両軍保有戦力

反幕府連合軍

  • グレートホーン…5
  • マーダ…14
  • ゲルダー…14
  • ザットン…8
  • ゲーター…5
  • モルガ…23

幕府軍

  • アイアンコング…1
  • レッドホーン…4
  • サーベルタイガー…6
  • ブラックライモス…12
  • ブラキオス…15
  • ハンマーロック…12
  • マルダー…8
  • ヘルキャット…15
  • マーダ…34
  • ゲルダー…32
  • ザットン…20
  • ゲーター…8
  • モルガ…51

 6月3日正午、両軍はトキョウにて激突した、幕府軍兵数1万5000、対するマサツ・タンシュウ連合軍は5000、兵力も装備も3倍以上もの差をつけられた連合軍は、新型のグレートホーンを前面に出して必死の抵抗を試みるも、多勢に無勢で全滅は時間の問題であった。

 レッドホーンに搭乗し、ゲルダー7機を擁する幕府軍のゾイド突撃隊を指揮していたヴォルフはこの状況を打開する方法を考えあぐねていた。

「くそっ! 俺はこの国の原住民を買いかぶり過ぎていたのか、なぜどの藩も連合軍に加担しようとしないのだ! こんな独立心の無さでは到底近代的な列強国になどなる事は出来ん…」

「それは違いますヴォルフ様」

 後ろから声をかけたのは副官の北条であった。

「幕府の後ろには天皇がついています、この国の住人にとって天皇は神にも等しい存在…、幕府に逆らう事は朝廷に逆らう事と同じなのです」

「なに!? そういう事だったのか、フフ…、ならば朝廷がこちらにつけば良いのだな? 原住民にできないのなら、天皇の血族であるこの俺が、力ずくでも朝廷をこちらにつけて見せよう!!」

 翌早朝、深夜幕府軍を密かに脱したヴォルフ率いる突撃隊は皇居を包囲していた。そして、ヴォルフを先頭に武装した10数名で皇居に突入し瞬く間に占領してしまった。そしてヴォルフはさらに深く突入し、ついに最深部の天皇の間へとたどり着いた。そこには息子であるヒロトを抱いた天皇エレナの姿があった。

「ヴォルフ! 一体この暴挙はどういう事なのです!? 気でも違ったのですか!?」

「無礼をお許しください伯母上、しかし、シュテルマーが作ろうとしている国はゼネバスの名を汚すものです、どうか私に付いて共に幕府を、シュテルマーを倒していただきたい!!」

「何を馬鹿な…! あなたが今こうしていられるのもシュテルマーのおかげではありませんか! ゼネバス一の忠臣をどうして裏切れましょうか、後からやってきて命を助けてもらった分際で思い上がりも甚だしい!! 失せなさい! もはやあなたを親族とは思いません、反乱軍の元へ行きたいのなら勝手にしなさい、次こそは命はありませんよ」

「…仕方がない、ならば力づくでこちらへつかせるまで!!」

 ヴォルフは剣を抜き放つとエレナに躍りかかった、するとエレナは立ち上がり、懐から短剣を取り出すと自らの喉元に突き付けた。

「汚らわしい寄るでない! あなたに好きな様にされるのなら、私は自ら命を絶ちましょう、命を助けてあげた代わりとはいいませんが、ヒロトは…、ヒロトだけはどうかお願いしましたよ!!」

「あっ!!」

 そう言うやエレナは短剣で喉を突いて死んだ、一瞬の出来事であった…。

「伯母上…、見ていてください、必ずやこの私がゼネバスの名にふさわしい国を作って見せます! 今よりこの俺が天皇だ! 早速連合軍の元へ行くぞ!!」

 こうして天皇の軍の証である錦の御旗を掲げたヴォルフの軍団は朝もやに姿をけしたのだった…。

イエイ山砲台を奇襲せよ

「では、俺を天皇として認めてくれるのか?」

 エレナの死を認めた後皇居を後にし、朝廷の印である錦の御旗を手にタンシュウ・マサツ連合軍へ身を投じたヴォルフは、事の成り行きを話した、エレナはシュテルマーが強引に立てた天皇とは言え天皇は天皇である、この国の者が神とあがめる者を半ば殺したような形になったのである、ヴォルフも決死の覚悟であった。

 だが、予想に反して桂と西郷はあっさりとヴォルフを次の天皇として認めたのである。この国にとってまだまだゼネバス人から学ばねばならない事は山ほどある、戦後、その両者を束ねるには理解あるゼネバス人のトップがどうしても必要だったのである。

「よし! 今日から我らは官軍だ、陛下のお持ちくださったレッドホーンと7機のゲルダーも頼もしい、レッドホーンはすぐにグレートホーンへ改装させましょう、後は幕府軍に何とか一撃を加える事が出来れば、やむを得ず幕府に従ってる諸藩もこちらになびいてくれるだろうが…」

「問題はどうやってその一撃を与えるかでごわすなぁ…、昨日今日と突撃を試みてみたものの、どこからか飛んでくるミサイルでとても進めたもんじゃない、突撃さえ決まればグレートホーンのビームガトリングで一気に薙ぎ払ってやれるものを…」

 そう言って桂と西郷は腕を組んで考えあぐねていた、そこへヴォルフが口をはさむ。

「なるほど、それはイエイ山に設営されたマルダー8機を擁する砲撃隊の攻撃だな、確かにあれを沈黙させない事にはどうにもならんな、戦力に劣る我らにできる事は奇襲しかないが、これは死を覚悟しなければならない任務となるだろうが…、だれかやってくれる者はいるか?」

 これは全滅も必至の任務である事は誰の目にも明らかであった、マサツもタンシュウも同盟を結んだとは言え、元は犬猿の仲と言われた仲である、出来れば自分の藩兵に危険を冒させたく無いと言う思惑は両者同じであった。

「その任、どうかわたくし目にお任せくだされ!!」

 そこへ突如頭をきれいに刈り剃った威風堂々とした青年が姿を現した。

「貴様は何者か?」

 ヴォルフが尋ねるとそばにいた北条が答えた。

「この者は私の部下で大田口廉也と言う者で、暴れる暴漢10人をたった一人で切り殺した事もある死を恐れない勇猛な男です、この男ならまさに適任でありましょう」

「それは頼もしい! では大田口にはモルガ12機の奇襲隊を与える、それから、途中ゲーターが配備されている事も考えられる、あれに察知されては奇襲は失敗だ、それを排除するべくマーダ8、ゲーター2機を先行させたいが、これを率いてくれる者はいるか」

「それは私が引き受けましょう」

 名乗り出たのは北条であった、大田口の上官である北条もまた、負けず劣らずの勇猛さで鳴らしている男であった。

「よし! ならば砲撃陣地を制圧次第すぐに狼煙を上げてくれ、我らはその合図と共に全軍を持って突撃をかける!!」

 かくして作戦は開始された、まずはマーダ8、ゲーター2機を率いた北条斥候隊が、続いてやや遅れてモルガ12機を率いる大田口奇襲隊が出陣して行った。

 しばらくすると、早くも斥候隊のゲーターが敵機の察知を知らせて来た、識別信号によると1機のゲーターを4機のマーダが護衛している様子であった、北条は号令をかけると8機のマーダを率いて進んで行った。

 その時! 突如どこからともなくミサイルが味方のゲーター目がけて飛んできた、ゲーターを失っては斥候の任も果たせず作戦は失敗してしまう、勇敢な一人のパイロットはマーダをゲーターとの間にすべり込ませて身を挺してこれを防いだ。
 ミサイルを発射したのは岩陰に隠れて偽装していた敵のモルガであった。

「おのれ! 良くも山田を!!」

 大切な部下を殺され怒り狂った北条は機首を返すとバルカン砲による反撃をかわしつつそのモルガへ突進するとコックピットへ渾身の蹴りをお見舞いした、火花を散らして吹き飛ぶモルガの頭部装甲、続けざまにかかと落としの要領でコックピットを叩き潰した。

 その頃にはすでに敵のマーダ部隊もこちらに気づいてすでに目視できる距離まで迫り、背部の電磁砲を打ち込んで来ていた。

「4から7番機はゲーターを護衛せよ、2、3番機は敵ゲーターの背後へまわれ、絶対に逃すな!!」

 電磁砲を撃ちつつ突進していく両軍のマーダはやがて激突し格闘戦に陥った、その隙をついて北条率いる3機のマーダは乱戦を抜け出し、逃走を図る敵ゲーターを追撃した、マグネッサーホバーシステムにより時速400キロ近くまで加速したマーダは瞬く間にゲーターとの距離を縮めて行った。

 しかし、あともう少しの所で敵ゲーターは森林に逃げ込んでしまった、妨害電波を発するゲーターはセンサーではとらえる事は出来ない、3機のマーダは目視による探索を開始した。

「よし、散開して探索しよう、俺たちには見えないが敵には俺たちの動きは丸見えだ、油断するなよ!」

 しばらく森の中をさまよっていると、やがて遠くから爆発音が聞こえてきた。

「あっちは斎藤機の方か! 佐藤! 俺の後に続け!!」

 爆発音のあった場所へ来ると、そこにあったのは機体を蜂の巣の如く撃ち抜かれ炎上するマーダの姿があった、コックピットも撃ち抜かれパイロットの生死は言わずと知れていた。

「くそ! 斎藤まで死ぬとは…、これは西の方角から撃たれているな、よし、俺が先行して囮になろう、佐藤は敵の射線をよく見極めゲーターの位置を掴め!」

 恐る恐る西の方角へ歩を進めると、やがて木々を突き抜けて何筋ものビーム弾が北条機に襲いかかった、北条は咄嗟に身をかがめるが背部の電磁砲を吹き飛ばされた。

「今だ! 行け佐藤!!」

 佐藤機が撃ってきた方向へ進んでしばらくすると敵の射撃が止んだので北条もその方向へ進む、そして目に飛び込んで来たのはゲーターの尾部レーザーカッターにより右足を切断され、今まさに止めを刺されようとしている佐藤機の姿であった。

「させるかぁ!」

 北条は間一髪のところでゲーターに飛び蹴りを食らわした、ゲーターは十数メートルも吹き飛ばされ、巨木に激突して沈黙した。その頃、味方のゲーターを護衛していた残りのマーダも、敵マーダを追い払う事に成功していた。

「ふう…、何とか勝てたか、後は大田口がうまくやってくれる事を祈るのみ…」

 初めてのゾイド戦で2機も撃破した北条は心地よい疲れと満足感を覚えながら目を閉じてシートにもたれかかるのだった。

ユバ・フジミの戦い

 北条斥候隊が敵ゲーターを撃破した頃、モルガ12機を率いる大田口奇襲隊はやや外れたルートから進撃していた。

(敵の迎撃が無いと言う事は北条殿はうまくやってくれた様だな)

 イエイ山砲台まであと数百メートルの位置まで接近したところで、大田口は隊の進行を止め全機に無線で呼びかけた。

「よーし! この方面の電子戦ゾイドは北条殿が排除してくれた、我らはこれよりイエイ山砲台へ奇襲をかける!! 我らの任務はマルダー8機の破壊である、余計な戦闘を避けるため、3番小隊の4機は東側へ回って囮となってもらう、その隙に我らで砲台へ突入しマルダーを撃破次第速攻で撤退する! この国の運命は貴様らの活躍にかかっている、たとえ刺し違えてでもマルダーを撃破せよ! では作戦開始!!」

 大田口の号令により本隊はその場で待機し、4機の別働隊が東側へ回っていった、そして十数分後、別働隊のモルガ4機はミサイルを放つなどして暴れて見せ、敵護衛のヘルキャット5機をおびき出す事に成功した。

「今だ! ミサイルを全弾撃ちこみ突入せよ!!」

 8機のモルガから一斉に16本ものミサイルが砲撃陣地へ撃ちこまれた、設置されていた大砲や兵員は一気に消し飛んだが、さすが重装甲を誇るマルダーは無傷で、すぐさま爆炎の中から加速ビーム砲と電磁砲で反撃してきた。
 しかし、モルガの頭部装甲も負けず劣らずの重装甲である、この程度の火力の水平射撃ではダメージを与える事は出来なかった。

 モルガは頭部バルカン砲を浴びせながら突進していったが、コックピットを強固な装甲内へ引っ込めたマルダーには全く無効であった。

「バルカンでは役に立たん! 2機一組となって側面から体当たりしてひっくり返せ!!」

 いくら強固な装甲を持つとは言え、運動性に劣るマルダーは格闘戦では敵わなかった、2機一組のモルガに側面から体当たりされたマルダーは転倒し、なす術も無くシェルユニット内部をレーザーカッターでズタズタに破壊されて沈黙した。

「我奇襲に成功せり! 信号弾を上げろ! 撤退だ!!」

 こうして大田口は全滅必至と思われた奇襲作戦を見事に成し遂げて見せた、しかし、ヘルキャットをおびき寄せた別働隊のモルガ4機はついに帰る事は無かった、これを機に大田口廉也は作戦成功のためなら部下の命をなんとも思わない冷酷な将軍として陰でささやかれる事となった。

「やや! あれは奇襲成功の信号弾でごわすぞ! 大田口めやりおったか!!」

 今か今かと信号弾が上がるのを待ちわびていた連合軍本陣はざわめき立った。

「良し今だ! 全軍突撃!!」

「お待ちください陛下、本当に陛下が行くつもりですか!? 天皇自らが先頭に立って軍を率いるなど前代未聞ですぞ!!」

 グレートホーンに乗り換え先頭に立って全軍を指揮すると言い張るヴォルフを桂大五郎は必死に止めようとしていた。

「止めるな桂、余は行くぞ、命を懸けて戦う所を見せずしてだれが余を信じてくれようか! それにこのグレートホーンがある限り余が死ぬことは無い!!」

 そう言うやヴォルフは桂を突き飛ばし、強引にコックピットを閉じて出陣していくのだった。

(全く、血の気の多い天皇陛下様だ)

「我らも続けー! マサツ藩に後れを取るな、陛下をお守りするのだー!!」

 ヴォルフ率いるグレートホーン5機、ゲルダー11機、モルガ9機からなる突撃隊を先頭にした反幕府連合軍の全軍が進撃を開始した、間もなくこれまでマルダーにより足止めされていた幕府軍第一防衛陣地がある「ユバ・フジミ」が見えてきた。
 防衛陣地幕府軍は、レッドホーン4、ブラックライモス6、ハンマーロック8、マーダ8、ゲルダー18、ザットン10、モルガ28と兵員1万に多数の大小砲などを設置して、圧倒的な陣容を誇っていた。

「錦の御旗を掲げろ!!」

 ヴォルフの号令に反幕府連合軍の中央部に錦の御旗が翻った、ついに連合軍は官軍となったのである、これを見た官軍将兵の士気は最高潮に達した、一方、これを見た幕府軍は大混乱に陥った。
 また、幕府軍を指揮していたシュテルマーの四天王と呼ばれるフランツ将軍は、連合軍にレッドホーンタイプのゾイドがいる事に驚愕した、敵には小型ゾイドしかいないと完全にたかをくくっていたのである。

「なんだあの黒いレッドホーンは! なぜ奴らがレッドホーンタイプのゾイドを持っているのだ!? ガイロスのダークホーンに極めて似ているが…」

 その時、フランツの元に伝令が息を切らして現れた。

「将軍! ヴォルフの突撃隊がどこにも見当たりません、奴の陣地はもぬけの殻です、また…、皇居が何者かに襲撃されエレナ様が、エレナ様が殺害され錦の御旗もどこかへ奪い去られていたとの連絡が入りました! おそらくヴォルフの仕業かと…」

「何! 姫様が亡くなられただと!? なんという事だ…、ヴォルフめ、ついに本性を現しおったか、恩を仇で返すとは畜生にも劣る所業、エレナ様の無念はこのフランツが奴と刺し違えてでも晴らす! すぐにシュテルマー様へも報告せよ、我らはこれより全軍を持って奴らを殲滅する!!」

 フランツの目に怒りの炎が宿った、ついにこの島の命運を掛けた一大決戦が始まろうとしていた。

伝統を打ち破れ! 四天王フランツの執念

「ああ姫様ぁ~、なぜ死んでしまわれたのです姫様ぁ あなたが居なくなったら私は…、私は一体何の為に戦えばいいのだ」

 報告を受け、急ぎ皇居へ駆けつけエレナの死体と対面したシュテルマーは母を失った子供の様に泣きじゃくっていた、そのあまりの痛々しさに周りの側近たちもかける声を見つける事ができなかった。
 シュテルマーはかつてゼネバス帝国が健在であった頃、幼馴染のエレナと交わした「2人の国を作り上げる」と言う約束を果たす事だけを考えて生きてきた男である、その思いに一片の邪念も無かった、ただ悲しいまでに純粋なエレナを想う気持ちしかなかったのである、冷酷な司令官として知られたシュテルマーも、エレナの前ではいつまでも夢に生きる若き青年仕官だったのである。
 そのエレナを失ったシュテルマーにはすでに怒りの感情さえ無い、ただ深い悲しみに暮れるのみであった。

「もう私がこの世に生きる意味も無くなった、いまお側にまいりますぞ姫様…」

 そう言うとシュテルマーはそばに落ちていた血塗られたエレナの短剣を掴んだ、その短剣は若かりし頃シュテルマーがエレナに送った思い出の短剣であった、シュテルマーはその短剣の刃先を自分へ向けると目を閉じて喉元へ突き刺そうとした。
 その時、まさに間一髪の所でそばにいた四天王の一人トビー将軍がシュテルマーを殴り飛ばした。

「あなたはそれでも男か! 殺された恋人の敵も討たず、あの世で姫様にどんな顔で会おうと言うのか!! それに今あなたが死ねば幕府は崩壊し、暴徒と化した原住民によって姫様が愛したゼネバスの同胞達が皆殺しになるかもしれんのですぞ! そんな事で姫様があなたを好きでいてくれると思うのですか!!」

 倒れたシュテルマーの胸倉をつかんで拳を高く振りかざしたトビーも、目にいっぱいの涙を浮かべていた、トビー達家臣もまた、シュテルマーと同じくらいエレナを慕っていたのである、その涙を見たシュテルマーは、優秀な頭脳ですぐに平静を取り戻した。

「トビー、すまなかった、おまえの言うとおりだ、姫様は私の常に冷静で勇敢な所が好きとおっしゃってくださった、ヴォルフの首を取らずして地下の姫様に合わせる顔も無いな」

 そう言ってシュテルマーはニッコリと笑って見せた、それを見たトビーも表情を和らげ、胸倉を掴んでいた手を放した。

「ご無礼をお許しください閣下、エレナ様亡き今、この国の帝王はあなたです、あなたの手で、エレナ様の夢であった、誰にも虐げられる事の無い、ゼネバス人によるゼネバス人の為の理想郷を作り上げるのです! さあ、今フランツ将軍が賊と戦っております、奴ならば間違いなくヴォルフの首を取ってまいりましょう、今は帝王らしく、ダイハン城で静かに待つのです」

 こうしてシュテルマーとトビーは幕府軍の西側の要衝であるダイハン城へと引き上げて行くのだった。

「えーい静まれ! 撃て、撃たんかー!!」

 一方その頃、ユバ・フジミでは、幕府軍総司令官のフランツ将軍が、錦の御旗を見て動揺する軍を必死に立て直そうとしていた、しかし、どの藩もみな、ゼネバス人に従う事に疑問を感じつつも、朝廷にだけは逆らえないとしたがってきたのである、その朝廷が反幕府連合軍についた今となっては、全く戦う理由を失ってしまったのである、ただ、幕府に絶対なる忠誠を誓うカイツ藩のみがフランツの命に従い虚しく大砲を放っているのみであった。

 その時、フランツ将軍のすぐ近くで砲弾がさく裂し、飛び散った破片が頬をかすめて血を流させた、見るとすでに土煙を上げて猛進してくる5機のグレートホーンの巨体が肉眼でも確認できるほど迫っている。

「えーい! こうなったら我が幕府軍本隊とカイツ藩のみで迎撃に出る!! 指揮はワシ自らがとる、ゼネバス伝統の突撃隊の強さを奴らに見せつけてやるのだぁ!!」

 そう言うやフランツは愛機のレッドホーンに飛び乗ると、直属のレッドホーン3機、ブラックライモス8機、ゲルダー18機、それにカイツ藩のハンマーロック6機を引きつれて出陣した。

(お? 出てきたな、レッドホーンが4機、ブラックライモスが…8機、それに小型ゾイドが十数機ほどか、フッ! 狙い通り全軍では出てこれないようだな、これならグレートホーンの性能で押し切れる!!)

 出てきた幕府軍の戦力を見てヴォルフは一人ほくそ笑んだ。その時、突如機体が凄まじい衝撃に襲われた、グレートホーンの頭部にレッドホーンの主砲が直撃したのだ、しかし、それは僅かに装甲を歪ませたに過ぎなかった。

(フフ、さすがグレートホーンだ、レッドホーンの装甲なら俺の命も危なかったな、それお返しだ!!)

「鈴木! あの一番右のレッドホーンにリニアキャノンをお見舞いしてやれ!!」

 ヴォルフが背部コックピットの砲手に命じるとグレートホーンの3連装リニアキャノンが火を噴いた、そして、3発の砲弾の内1発が見事レッドホーンに命中した、それは頭部の装甲の一部とビーム砲を破壊したが撃破には至らなかった。

(レッドホーンと戦うのは始めてだが、さすがに動く要塞と言われただけあって頑丈なものだな、だが…)

「鈴木! 今度は収束ビーム砲だ!」

 ヴォルフの命で今度は収束ビーム砲が放たれた、これは連射は出来ないが貫通力は最も高い兵装である。しかし、これは突如向きを変えたレッドホーンにかわされてしまった。

「チッ、かわされたか、さすが歴戦の戦士だな…」

 やがて周囲にブラックライモスやゲルダーの砲弾もさく裂するようになった、両軍の距離が迫りついに激突しようとしていたのである。ここまでで官軍はゲルダー3機、モルガ5機を、幕府軍はゲルダー2機を撃破されていた、全軍での出撃では無いとは言え、今だ幕府軍の戦力は優勢であった。

 両軍の距離が数百メートルまで迫ったとき、幕府軍はレッドホーンと護衛のハンマーロックを中央に、ブラックライモス、ゲルダーを両翼に据える陣形に構えた。

(両脇を機動力に勝る中、小型ゾイドで囲んで逃げ場を無くし、レッドホーンの突撃力を最大限に生かすゼネバス伝統の陣形か…)

 ヴォルフもこれまで数多のへリックゾイドを葬ってきたこの突撃の威力は十分すぎるほど分かっている、グレートホーンに乗っているとは言え、さすがに決死の覚悟が必要だった。

「ゲルダー、モルガ部隊はグレートホーンの背後に付け! グレートホーン部隊はビームガトリングで両サイドの小型ゾイドを薙ぎ払う!!」

 やがて一直線に突進する官軍の周囲を無数のブラックライモスとゲルダーが取り囲んだ、前方からは4機のレッドホーンが角を突き出して突進してくる。

「いまだっ! ビームガトリング砲放てー!!」

 ヴォルフの号令に5機のグレートホーンは一斉に自慢のビームガトリング砲を放った、無数の光線がブラックライモスとゲルダーを襲う、正面装甲は分厚いが側面装甲の弱いゲルダーは一たまりも無く、次々となぎ倒されていく、瞬く間に14機ものゲルダーは撃破され両脇のゾイドの壁に穴が開いた。

「見たか! これがグレートホーンの実力だ!! よし、この隙に右側へ抜けるぞ!!」

 突如右へ向きを変えたヴォルフ軍団は3機のブラックライモスを撥ね飛ばして包囲を抜けた、直後4機のレッドホーンが官軍をかすめる、間一髪で必殺の突撃を回避したのである。

「よし! 背後に回って一斉に砲撃を浴びせてやれ!!」

 反転した官軍は背を向けるレッドホーンに一斉に砲弾を撃ち込んだ、強固な装甲に身を包んだレッドホーンにも穴がある、背面装甲は一番薄く設計されているのだ、そこを撃ちこまれてはさしものレッドホーンも一たまりも無かった、次々と倒れるレッドホーン、しかし、その中の1機だけが巧みに砲撃を交わしてヴォルフ軍団の方へ向き直った、その装甲にはフランツ将軍の乗機である事をしめす「F」のマークが描かれていた。

「マクレガー、我らの負けだ…、貴様は全軍を連れてダイハン城へ退却してくれ、ダイハン城にはシュテルマー殿がおられる、将軍自らが指揮をとってくだされば、必ずや我が軍も士気を盛り返すだろう…、ワシが囮になる、その隙に逃げるのだ、では、将軍によろしく伝えてくれ」

 フランツはブラックライモスに搭乗する副官のマクレガーにそう命令すると、通信機の電源を落とし、背部と尾部のコックピットも強制排除してただ1機ヴォルフ軍団に突撃して行った。

「あのレッドホーンはフランツか! 馬鹿め、たった1機で何が出来る、敗北のショックで気でも狂ったか! 全機砲撃開始!!」

 瞬く間に爆炎に包まれるフランツ機、リニアキャノン、対空砲も吹き飛び満身創痍になりながらもなお突進を止めない。

「奴め、死ぬ気か!?」

 ヴォルフ軍団まで数十メートルの距離まで迫ったとき、フランツの目にグレートホーンの装甲に描かれたヴォルフ機を示す「W」のマークを見つけた。

「ヴォルフ! やはり敵に寝返っていたのか!! 貴様は、貴様だけは地獄への道連れにしてやる!!」

「フランツ! 貴様の勇気に敬意を表して俺自らが相手をしてやろう!! 全機手を出すな!!」

 ヴォルフ機もフランツ機に真っ直ぐ突進していく。

「くらえ!!」

 両機激突したと思われた瞬間、ヴォルフは地面すれすれに構えたクラッシャーホーンを思い切り突き上げた、しかし、その攻撃は空振りに終わった、激突の瞬間、フランツ機は僅かに左にそれてその攻撃をかわしたのである、それと同時に、レッドホーンのコックピットハッチが開かれ、中からロケットランチャーを構えたフランツ将軍の姿が現れた、その照準はグレートホーンのカメラアイに向けられていた。

「あぁっ! やられる!!」

 ヴォルフは死を覚悟して目をつぶった、しかし、ロケットランチャーの照準は僅かにずれ、グレートホーンのコックピットハッチの角にあたってさく裂した。
 フランツ執念の一撃は失敗に終わり、彼はコックピットから投げ出され、力尽きて倒れたレッドホーンの下敷きになって死んだのだった。

「はぁ、はぁ…、老いたりフランツ! しかし恐ろしい男だった、奴こそ真のゼネバス軍人よ…」

 ヴォルフはハッチを開けて額の汗をぬぐった、こうして官軍と幕府軍の一大決戦は官軍の完全勝利で幕を閉じたのである、かつてゼネバス帝国の時代から温存されたレッドホーンと、ガイロスの技術を取り入れ新に生まれ変わったグレートホーン…、この勝敗はこの先のヘリオス島の将来を暗示しているのであろうか…。

幕府軍崩壊

「何!? 我が軍は大敗、フランツも戦死、レッドホーン4機も撃墜され、敵はこのダイハン城へ向けて進撃中だと! ああ…!!」

 ユバ・フジミの戦いで幕府軍が惨敗した報告を受けてシュテルマーは完全に意識を失い、操り人形の糸が切れたように崩れ落ちた、それを近くにいた四天王トビーが咄嗟に支えた。
 最愛のエレナを殺され、もはやフランツがヴォルフを討って復讐を果たしてくれることだけを生きる気力としていた彼にとって、この報告は決定的であった。

(将軍がこれでは味方の士気にかかわる…、ここは一度ドエへ戻り、虎の子のサーベルタイガー部隊とあのゾイドを持ち出してくるより手はあるまい…)

「おい貴様、退却してくるマクレガーに伝えろ、ワシとシュテルマー様はこれよりドエへ戻り援軍を引きつれて戻る、それまでダイハン城を死守せよとな!」

 近くにいた側近にそう命じると、トビー将軍はシュテルマーを抱えてダイハン城を後にし、さっさと軍艦でドエへと引き上げて行った。

 やがて、辛くも追撃を逃れ、心身共に疲れ切った敗軍を率いて、這う這うの体でダイハン城へと逃れて来たマクレガーは、トビーの伝達を聞いて愕然とした、幕府軍とて、もはや士気は限界まで低下し、潰走寸前の状態だった、ただ、大将軍シュテルマーが直接指揮を取って兵たちを元気付けてくれる事のみを頼りにここまで来たのである。
 それが援軍を連れてくると言えば聞こえは良いが、誰の目から見ても敵前逃亡と映っても無理のない行動をとったのである。

(ああ…! シュテルマー様、なんて愚かな事を! 援軍はトビー将軍に任せ、あなただけは絶対にここにとどまるべきだったのだ! もう我が軍は終わりだ、とてもダイハン城を死守する事など無理だ…)

「何!? シュテルマーがドエに逃げ帰っただと!! 奴め、やはり我らを捨て駒と考えていたのか、もう我慢ならん! 我が藩は反幕府連合軍に加わるぞ!!」

「敵の大将は先陣に立って戦っていたと言うのに! もはやシュテルマーなどに期待する所は何も無い、我らも降伏だ、あんな腰抜け将軍の率いる幕府などわが手で討ち倒してやる!!」

 マクレガーが危惧した通り、いや、当然の結果として幕府軍は崩壊した、心のよりどころとしてきた朝廷まで敵側についた今となっては、半信半疑で幕府に従ってきた諸藩も、これが決定的となって次々と幕府軍を去り、ある藩は官軍に降り、ある藩は自国へ帰って固く城門を閉ざした。
 中でも幕府にとって手痛かったのは、マサツ藩が抜けた後、最大の小型ゾイド生産国となっていたトユウ藩の寝返りであった、これによって幕府は今後、戦力の立て直しさえおぼつかなくなっていくのである。

 その後、マクレガーは僅かに残ったハンマーロック3機、ゲルダー1機、ザットン10機、モルガ11機と、カイツ 藩兵を中心とした幕府軍残兵3000余名をドエへ返させ、自身はしんがりとして配下のブラックライモス4機を率いて進撃してきた官軍に突撃していったが、集中砲火によりあえなく全滅、マクレガーも壮絶なる戦死を遂げた。

 こうして開戦前には官軍の3倍もの兵力を誇った幕府軍は事実上壊滅し、逆に官軍は投降してきたマーダ8、モルガ15機と、兵士8000人などを加え一大勢力へと成長していた。

「おお! これだけのモルガがあればそろそろあれも製造出来るな!」

 投降してきた15機のモルガを見て、ヴォルフは歓喜の声を上げた。

「あれ、と申しますと?」

 そばに居た北条が尋ねる。

「うん、直撃すれば大型ゾイドさえ一撃で葬る18センチ迫撃砲を搭載したモルガキャノリーだ、もはや我が軍は圧倒的な戦力を誇るが、幕府軍にもまだ無敵を誇るトビー将軍のサーベルタイガー高速戦闘部隊があるからな、備えを万全にしておくに越した事はない」

「ああ、あの巨体で素早く動きまわる赤い悪魔の事か、かつて我が藩が幕府に戦いを挑んだ時僕も一度目にした事がある、我が方の砲弾をすべてかわし、恐ろしい速さで突っ込んで来てたった1機で10機のマーダを全滅させたのだ…、今思い出すだけでも背筋が凍るよ」

 そう言って桂は凍えた様なしぐさをしておどけて見せた。

「ならば我がトユウ藩がその改造を請け負おう、先ほどまで敵味方に分かれて戦っていたのだ、我が藩の忠誠を示したい」

 そう言うのは投降したトユウ藩を率いる後藤象三であった。

「うむ、ではトユウ藩にモルガ10機と技術班を送る故、2か月以内にモルガキャノリーへと改造してもらいたい、モルガキャノリーが完成するまでの間進撃はせず、我らはゆっくりと静養して鋭気を養うとしよう! このトキョウにはうまいものも、綺麗な場所もたくさんあるからな」

「ならおいどんは八つ橋を食べ歩きに行くでごわす、腹が減っては戦も出来んでごわすからなぁ」

 そう言って西郷は腹をたたいて皆を笑わせるのであった、こうしてこの島の運命を決める決戦は官軍の大勝利に終わり、戦いに疲れた英雄達は束の間の休息を満喫したのであった。

幕府軍動く

「将軍! もはや先の戦いで傷ついたゾイドの修復も完了し、新たに2機のヘルキャット、4機のモルガも配備され我が方の準備は万端です! これ以上手をこまねいていては敵との戦力差は開く一方です、どうか出陣のご決断を…!!」

  ユバ・フジミの戦いより1か月半ほど経とうとしていた8月中旬、あれから両軍は、お互いの領地の境界にゲーターやマーダなどを配備して警戒線を張っていたが、時折歩兵同士の小規模な銃撃戦が起こる程度で、両軍沈黙を保っていた。

 ここは幕府の本拠、ドエ城の天守閣、トビー将軍はこうして連日、必死にシュテルマーに出陣を促していた、しかし、シュテルマーはただ天守閣より外の景色を眺めているのみで、瞳の光も失われ、トビーの声など全く聞こえていないかのようだった。

(この男はもうだめか…)

 トビーは背を向けて座り、無気力に外を眺めるシュテルマーを冷やかな軽蔑の眼差しで見下した。

「ならば将軍、私にあのゾイドをお貸しください、あれさえあれば私一人で討幕軍など壊滅させてご覧にいれます、もはやじっとなどしてはおれん、ではごめん!!」

 そう言って部屋を後にしようとした時、トビーの背後からシュテルマーの声が聞こえた。

「確かにそろそろ頃合いかもしれぬな、だが、あの機体にはワシが乗る、これよりワシの最後の策を授ける、心して聞くがよい…」

「最後…?」

 その夜、トビー将軍はシュテルマーより驚愕の秘策を聞かされた、そして翌日、早速作戦は開始され、トビーは配下のサーベルタイガー6機、ヘルキャット10機などからなる高速戦闘部隊を率いて出陣する事となった。

「では将軍、行ってまいります…」

「うむ、武運を祈る、だが決して積極的攻勢には出るな、極力戦力を温存し敵を引き付けるのだ、ワシもすぐに出る」

 そう言ってシュテルマーはサーベルタイガーのコックピット上のトビーに敬礼をした、その眼には強い決意の光が宿っていた、トビーも敬礼を返す、だが、その眼にはいっぱいに涙が湛えられていた。

「サーベルタイガー高速戦闘部隊出陣!!」

(ワシはもう疲れたのだ…、トビー、真ゼネバス国を、我が同胞達をたのんだぞ…)

 シュテルマーは出陣していくトビーの部隊の後姿をいつまでも眺めているのだった。

 やがて高速戦闘部隊は両軍の警戒線を超えた、官軍のゲーターはすぐにこれを察知し、すぐにヴォルフの元に異変が伝えられた。

「ついに奴が、トビー将軍が出てくるか…、予想より早かったな」

 幕府軍最強と謳われるトビー将軍の高速戦闘部隊の勇名はこの国に知れ渡っている、その場にいた幹部たちは一瞬にして緊張に包まれた。

「なに、モルガキャノリーの配備は間に合わなかったが、我が方の戦力は圧倒的だ、それに余とてサーベルタイガーより遥かに勝る性能のライガーゼロと、それを操る天才的パイロット、レイ・グレックとの幾度とない死闘を乗り越えてきたのだ、いまさらサーベルタイガーなど恐れるに足らんよ、再び余が先陣を務めよう、全軍を持って叩き潰し、その余力でドエも一気に攻め落としてくれるわ!!」

 いきり立ちグレートホーンに乗り込もうとするヴォルフの前に北条英機が立ちはだかった。

「お待ちください陛下、我が方の戦力は確かに圧倒しており、勝利は間違いないでしょう、しかし、シュテルマーとてそれは十分承知のはず、あのシュテルマーが意味も無く無謀な戦いを仕掛けてくるとは思えません、何か悪い予感がします、天皇となられたからには軽はずみな行動はお慎みください、もはや陛下の勇名は知れ渡りました、この度のご出陣はお控えくだされ!」

 ヴォルフの武人としての血はなおも騒いだが、かつてガルドの必死の制止を振り切り前線へ出陣し、自分がレイ・グレックに倒された事により全軍の士気が低下し、ついにはネオゼネバス帝国の崩壊につながった事を思い出し、必至に自分を制しはやる気持ちを抑えた。

「う、むう…、確かにシュテルマーほどの男が無駄に戦力を浪費するとは思えんな、ここは警戒を怠らない様にしよう、迎撃部隊は北条が指揮を執れ、後方の警戒は余とタンシュウ藩が請け負う、それから大田口! 貴公はトユウ藩へ赴き、すでに完成しているモルガキャノリーを引きつれて戻れ、モルガキャノリー部隊の指揮は貴公に任せる」

 先のイエイ山砲台奇襲の成功により大田口廉也は大変に気に入られ、いまではヴォルフの側近に列せられる様になっていたのだ。

「では頼んだぞ北条、余とてこの国の首都であるドエを戦火にさらす事はしたくない、シュテルマーとて虎の子のサーベルタイガー部隊を失えば戦意を完全に消失するであろう、貴公の力で完膚なきまでに叩き潰して参れ!!」

 北条は大きくうなずくと、グレートホーン5、マーダ10、ゲルダー10、モルガ15機からなる迎撃部隊、ザットン4機からなる輸送部隊を率いて出陣して行った。
 後方警戒はあと数日でマサツ藩より戻るヴォルフが幕府軍より奪って来たレッドホーンを改装したグレートホーンを中心に、残存小型ゾイドが担う事となった。

(これでこの国は俺のものになる、父上、ガルド、ズィグナー、見ていてくれ、俺が必ずやあなたたちの夢を実現してみせる…!)

 ヴォルフは自分の夢であった万人平等の理想郷に思いをはせ、勝利を確信して北条迎撃部隊を見送った。

遭遇! 四天王トビー高速戦隊

「こちら第1警戒部隊隊長機ゲーター、現在敵の攻撃を受く! 我が方の損害マーダ4機全滅、レーダー感知せず、敵の数、機種共に不明! ああ! 気づかれた、うぎゃぁぁぁー!!」

「おい、どうした! おい! 応答しろ!!」

 それは、トビーの高速戦闘部隊を迎撃するべく進軍していた官軍迎撃部隊を率いる北条の元に届いた、サーベルタイガーの動向を追跡していた第1警戒部隊からの通信であった。

(くそ! 第1警戒部隊は全滅か、しかしゲーターのレーダーが探知出来ない敵とは…、おそらく敵ゲーター妨害電波下に置いてヘルキャットの奇襲を受けたと見て間違いないだろう…、これで敵の動きが分からなくなってしまったか、神出鬼没の高速戦隊が相手なだけに厄介だな…)

「全員に告ぐ! 第一警戒部隊が全滅した、敵は5機のサーベルタイガーに加え、ヘルキャットを護衛に付けていると思われるが数は不明! ゲーターを失った以上ヘルキャットの動きを探知するのは不可能だ、いつ襲撃を受けるかわからない、周囲の警戒を厳重にせよ!!」

 「カミソリ北条」の異名を持つ北条の切れる頭が、瞬時にして情報を分析して全軍に注意を呼びかけるのだった。

 それから1日半、北条はバイク部隊を斥候に出して最大限の警戒態勢を敷いて進軍を続けたが、襲撃は愚か、敵の影さえ現れなかった。
 しかし、森林地帯に差し掛かった時、ついに斥候部隊からの通信が入る。

「こちら第3斥候部隊! 11時の方角、距離73000メートル地点でサーベルタイガー5機を発見、護衛ゾイドは見当たりません」

「来たか! 敵の居場所が分かった以上もはや恐れる事は無い、こちらから打って出て踏み潰してやる! 全軍我に続けー!!」

 北条の号令と共に、5機のグレートホーンを先頭にした迎撃部隊は最高速で前進を開始した。やがてグレートホーンの高性能レーダーが5機のサーベルタイガーの機影を捉える。

(なに? レーダーが使える!? てっきりゲーターを配備して通信妨害を図ってくると思っていたが…、しかし、通信妨害が無ければこのグレートホーンのレーダーならヘルキャットの機影くらいは捉えられるはずだがそれも無い…、てっきりこの森林で奇襲を仕掛けてくるものと思っていたが、一体何を考えている…?)

 敵の考えを測り兼ね、若干の不安を覚えたが北条は構わず攻撃を仕掛ける事にし、10機のマーダを先行させてサーベルタイガーを取り囲むよう命じた。

(フフ、この森林ではサーベルタイガーも自慢の運動性を発揮しきれまい、だが、このグレートホーンのパワーなら!!)

 5機のグレートホーンはクラッシャーホーンで木々をなぎ倒して真っ直ぐ直進する、サーベルタイガーもこちらの動きに気が付いて向かってきた。

「なに!? 護衛も付けず正面から突っ込んでくるとは、やはり奴らは死に場所を求めて無策に出てきただけだったのか、ならば武士の情け、華々しく散らせてやろう! 砲撃開始!!」

 5機のグレートホーンの3連装リニアキャノンが一斉に火を噴く、しかし、サーベルタイガーは生い茂る木々の障害も物ともせず、華麗にそれをかわして見せた。

(なんと…、ここであれだけの動きが出来るとは、やはりトビー高速戦隊は伊達では無いか!!)

 5機のサーベルタイガーは凄まじい砲撃を次々とかわして確実に距離を縮めてくる。

(奴らめ、サーベルタイガーの火力ではグレートホーンを倒せないと知り、格闘戦を挑んで来る気だな…、だが、近づいた所でこのビームガトリングの餌食だ)

「砲撃止めい! ビームガトリング砲射撃用意!! ゲルダー部隊はグレートホーンを中心に円陣を組んで全方位からの攻撃に備えよ!!」

 北条はサーベルタイガーが飛び掛かってきた所を蜂の巣にしてやろうとじっと敵機がビームガトリング砲の射程に入るのを待った、30メートル、20メートル、10メートル…。
 もしも懐に飛び込まれ、サーベルタイガーの牙に襲われれはグレートホーンとてただでは済まない、北条は緊張を押し殺して一斉射撃の号令を下す瞬間を見計らっていた。勝負は一瞬で決まる、北条の頬を冷たい汗が伝う。

(5、4、3、2…)

 まさに合図を下そうとしたその瞬間、突如サーベルタイガーは直角に向きを変え、そのまま背を向けて走りだした。

「なに!? 敵に背を向け逃げるとは武人の風上にも置けない奴! 潔く死ねー!!」

 北条は必死に追撃を加えたが、とうとうサーベルタイガーに一撃を加える事も出来ずに逃げられてしまった。

「はっはっは! みろ、あの無様な逃げ様を! ゼネバス最強の戦士があの様ではゼネバス人など高が知れてるな、それ、このまま追撃してドエ城を落としてしまえ!」

 トビー将軍のあまりの無様な逃げ様に、北条は完全に慢心して、警戒も解いて追撃を開始した、普段は冷静で頭の切れる北条だが、この様な所にやや欠点の見られる男でもあった…。

トキョウ炎上

 ここは今日の昼間トビー将軍と北条が会戦した地点にほど近い森の中、既に日は落ち、あたりは漆黒に包まれていた、その暗闇の中に突如無数のゾイドのカメラアイのライトが浮かびあがる。

「どうやらトビーはうまく敵を引き付けてくれたようだな…」

 それは、先に官軍のゲーターを倒して警戒線を突破し、その後この地点にてゲーターの妨害電波に守られつつ息をひそめて待機していたシュテルマー率いる別働隊であった。

「将軍、どうやらヴォルフは出てきていないようでしたね」

「フフ、これは好都合だ、うまくいけば鬼畜ヴォルフの首を、地下の姫様への手土産にできるかもしれぬ、では貴公たち護衛ご苦労であった、これより先はワシ一人で行く、後の事はよろしく頼んだぞ」

「将軍! やはり我らも連れて行ってください!! 今の我らがあるのはすべて将軍のおかげです、我らの英雄をたった一人で敵地へ行かせるなどとてもできません!!」

「ならぬ! …ならぬ、これは幕府軍の起死回生の作戦であると同時に、ワシが地下の姫様へ捧げる私闘でもあるのだ、そんな戦いに姫様の愛された貴公たちを巻き込んで死なせてしまえば、今度こそ姫様へ合わせる顔が無くなってしまうではないか、真にワシを想ってくれるのなら、ここは生き延びてトビーを助け、真ゼネバス国を…、ゼネバスの純血を守り抜いてくれ! それに、ワシとてむざむざ死んでやる気は無い、ワシがこの最強のゾイドに乗っている以上死ぬことは無いのだ!! さあ行け! 帰って祝杯の用意でもしておくのだな!」

「くそう!! たった数か月前までは愛する姫様の元、夢に向かって輝ける日々を送っていたのに! あの疫病神め!! 絶対に許さんぞぉぉぉぉーーーー!!!」

 シュテルマー機のコックピット内、無線機からは部下たちのむせび泣く声が聞こえてきた、シュテルマーも頬に涙をつたわせながら、隣の副操縦席に置いてあったエレナのドクロにそっと口づけをするのだった…。

 翌朝、官軍の本拠地となったトキョウにある皇居では、柔らかい朝日に包まれる中、ヴォルフは好物の納豆ご飯をゆったりと楽しんでいた、そこへ突然、息を切らした側近が現れる。

「大変です陛下! 謎の巨大ゾイドが現れ市街で暴れております! 市中警備隊のマーダ3機もなすすべなく撃破されたとの事です、報告によればそのゾイドはグレートホーンよりも巨大な見た事も無いゾイドで、15㎝迫撃砲弾も軽々と跳ね返したとの事です! 進行方向からするとおそらく、奴はダイハン城に向かっているものと…」

 そこまで聞いた時ヴォルフは思わずハシを取り落とした。

「ダイハン城…、あそこには我が軍の軍需物資が集められている…、まさか!! おい! 昨日マサツ藩より届いたグレートホーンは動くな!? すぐに用意せよ、余自らが迎撃に出る!!」

「お待ちください陛下! 敵はグレートホーンよりも明らかに強力です! 陛下を危険な目に合わせるわけにはいきません、ここは一旦引き、北条の帰りを待ちましょう!!」

「馬鹿者! それこそ敵の思う壺だ、街が破壊されるのを指を加えて見ていてはせっかく得た信用もあっという間に地に落ちてしまう、それに、ここに残った者たちではおそらく相手にもならないだろう…、ここは余が行くしか無いのだ!!」

 そう言うやヴォルフは一目散に格納庫へおもむき、整備員を押しのけるようにしてグレートホーンに飛び乗ると、側近たちの必死の制止も振り切って格納庫を飛び出して行くのだった、久々に強い敵と戦える事に、ヴォルフの武人としての血が騒ぐのを抑えられなかったのかもしれない…。

 しばらく行くと、ヴォルフはトキョウ市街が見渡せる小高い丘に到達した、そこで目にしたのは、市中のあちこちから火の手が上がり市民が逃げ惑う、地獄絵図の様な光景だった。
 そして、一際激しく燃え盛る箇所に目をやると、そこには諸悪の根源たる巨大な怪物が、炎の中で両腕を天高く振り上げて暴れている姿が見えた。

「アイアン…コング…」

 ヴォルフがそうつぶやいた時、後から必至に追いかけてきた部下のマーダ3機が到着した。

「陛下、一人で行くなど無謀すぎます! 我らもお供いたしますぞ、それにしてもあれはなんなのですか!?」

「…あれはアイアンコングだ、お前たちは来るな! マーダ3機では焼け石に水だ、お前たちはすぐに市民の救助へ向かえ、それから大田口に至急完成している分だけモルガキャノリーを連れてくるように伝えよ!!」

「アイアンコングとはそんなに強いゾイドなのですか!?」

「ああ…、強いなんてものでは無い、確かにアイアンコングよりもカタログスペックは上のゾイドは何体かは存在する、だが、あの機体は数あるゾイドの中でも最も人間に近い姿をしている分、圧倒的に操縦しやすいのだ、中には全ゾイド中最高傑作に挙げる者も多い…、その戦闘力はパイロットの腕次第で図り知れないものとなる、それを恐らくはシュテルマー四天王の誰かが操縦しているかもしれんのだ…!」

「何という化け物だ…、まさかグレートホーンより強いゾイドが存在していたなんて! それならば本当に我らが行っても無駄な様ですね…、ならばすぐに大田口のモルガキャノリー部隊を引きつれてまいります! それまではどうかご無理をなされない様…」

「分かっておる、余がこのグレートホーンに乗っている以上、そう易々とやられる事は無い、では頼んだぞ!」

 そうしてヴォルフは部下と別れ、一人敵の目標と思われるダイハン城へと向かって行くのだった。

恐怖! アウトレンジ攻撃

 官軍の要衝ダイハン城、そこにはここ2か月の間、幕府軍との戦いに備えて食糧弾薬が溜め込まれていた、もしもこれを失えば幕府を倒すのはあと数か月先になるだろう、そうすれば敵も何らかの対策を講じ、形勢を逆転させるチャンスを与えてしまう事にもなりかねない。

 つい数か月前までこの地は幕府軍が支配していたのだ、ダイハン城が軍需物資の貯蔵に最適である事をシュテルマーが予測するであろうことは考えるに難しくない。
 そう確信したヴォルフはトキョウとダイハン城を結ぶ最短ルートである開けた平野をシュテルマーの進撃ルートと見てグレートホーンにて待ち構えていた、市街の被害が拡大する事を避けるため、あえてトキョウですぐに迎撃しなかったのである。

 その時、突如グレートホーンのコックピット内に警報が鳴り響いた。

「何事だ鈴木!」

 ヴォルフは背部第2コックピットの砲撃・警戒担当の鈴木に呼びかけた。

「大型高速飛来物2つが接近中! 当機はロックオンされています!!」

「チィ! アイアンコングの長射程戦術ミサイルか! ビームガトリング砲迎撃準備!!」

 超高性能電子機器を備えるアイアンコングが、グレートホーンの索敵範囲外より攻撃をしかけてきたのであった、アイアンコングの背部に装備された大型連装戦術ミサイルはゴジュラスを倒す事を想定して装備されたものである、直撃を受ければグレートホーンとて一撃で木端微塵となってしまうであろう。

 ヴォルフは鈴木にビームガトリング砲での迎撃準備をさせつつ、近くの岩陰へグレートホーンを移動させて待ち構えた。

 やがて警戒ブザーは危険信号に変わりコックピット内にはけたたましいブザーが鳴り響いた。

「ビームガトリング砲射撃開始! 落とせ! 落とせぇぇぇーーーーー!!!」

 グレートホーン必殺のビームガトリング砲が火を噴き、無数の光の筋が天空へと打ち上げられた、だが、高速で飛来するミサイルにはなかなか命中しない。

「これよりゾイドコア制御リミッターを解除する! 鈴木! グレートホーンと精神を共鳴させてミサイルを撃ち落としてみせろ! 貴様のゾイド使いとしての才能を見せてみろ!!」

 ヴォルフはグレートホーンのゾイドコアの野生体本能制御リミッターを80パーセントまで解除した、ゾイドコア制御リミッターは平均的なパイロットの技量に合わせてかけられているものだが、これを解除すれば下手をするとゾイドが暴走する恐れもある、だが、優れたゾイド使いならばゾイドと精神を共鳴させる事により、スペック以上の戦闘力を発揮する事もあるのだ。
 伝説的なスーパーエースパイロット、レイ・グレックやジーニアス・デルダロスなどは100パーセントまで解除して戦っているとの噂であった、だがヴォルフは50パーセント解除の経験しか無かった。

「やって見せます陛下! グレートホーンよ、私に力を貸してくれぇぇぇぇーーーー!!」

 鈴木は全身全霊を込めてビームガトリング砲発射スイッチを押した、すでに目視できる距離まで接近しているミサイルへ向けて、再び無数の光の筋が放たれる、ヴォルフも精神を集中させてグレートホーンを制御していた。
 直後、天空で大爆発が起こった、草食恐竜であるスティラコサウルスのコアを持つグレートホーンは一際防衛本能が強く、身を守る為の行為には優れた性能を発揮するのだ、その力をヴォルフと鈴木が見事に引き出したのであった。

 しかし、いまだコックピット内の警戒ブザーは鳴りやまなかった。

「申し訳ございません陛下! 1本撃ち漏らしたようです、もう間に合いません、全員衝撃に備えてください!!」

 そう、2本あるミサイルの内1本は未だ健在であったのだ。

「グレートホーンよ! 死にたくなければ貴様も安全地点を割り出して生き延びて見せろ!!」

 ヴォルフはそうグレートホーンに呼びかけつつ、ミサイルの飛来方向を見極めて機体を移動させた、ミサイルをうまく岩に激突させて、直撃だけは避けようとしたのである。
 その直後、凄まじい衝撃がヴォルフを襲った、意識が吹き飛び、頭は真っ白になり何も聞こえなくなる、ただ、目の前のモニターに映る岩の破片が飛び散る様がスローモーションの様に見えていた。

 しばらくしてヴォルフは目を覚ました、コックピット内は静まり返っている、ずいぶん長い時間が経ったように思えたが、時計を見ると1分ほどしか経っていなかった、モニターには垂直になった地平線が映っている、機体が横倒しになっているのだ、だが、グレートホーンは未だ生存している事を示していた、直撃を回避する事に成功したのである。

「鈴木、村山、大丈夫か?」

「…はい、私は大丈夫です」

 ヴォルフは操縦員の安全を確かめる為に呼びかけた、だが、いくら呼びかけても尾部の後方警戒担当第3操縦席の村山からの返答は帰ってこなかった。
 グレートホーンの第3操縦席は改造元のレッドホーンから変更無くパイロットがむき出しの操縦席であった、これはレッドホーンの登場した当時は小型ゾイドが主な相手であったことからさほど問題では無かったが、後に激化する戦場に置いて、パイロットの安全性を指摘する声が高まっていた、その欠陥が最悪の形で露呈したのであった。

 村山源三郎24歳、前途ある若者のあまりにも無残な最期であった、ヴォルフはグレートホーン第3操縦席改良の必要性を痛感すると共に、村山の敵を討つことを強く決意するのであった。

大将一騎打ち

 しばらくするとレーダーにアイアンコングの巨大な影が映し出された、真っ直ぐこちらへ向かって来る、やはり敵の狙いはダイハン城と見て間違い無かった。

「そこのアイアンコング、止まれ! 我は新天皇ヴォルフ・ムーロアである、おそらく貴公はシュテルマー四天王の誰かであろう、余はもうこれ以上同胞同士で争う事は好まぬ! もはや幕府軍は終わりだ、悪いようにはせぬゆえ大人しく投降せよ!」

「………」

 ヴォルフの乗っているグレートホーンは幕府軍のレッドホーンを改造したものである、通信設備に手は加えていないので幕府軍の機体へ通信は通じるはずと見たヴォルフは、アイアンコングへ通信を試みた、しかし、返事は帰ってこない、それでもヴォルフは続ける。

「もはや英雄シュテルマーは死んだ! 今の奴は己が野望の為だけに生きる逆臣である! 奴の創ろうとしている国はゼネバスの名を汚すものである! 真にゼネバスを思うのであれば余の元へ来い! 余と共に真にゼネバスの名にふさわしい国を創っていこうぞ!!」

「……ヴォルフ、ヒロトは元気にしておるのだろうな?」

「その声は…!? シュテルマーか!?」

 突如返ってきた返事の主にヴォルフは驚愕した、いくら最強ゾイドに乗っているとは言え、まさかこんな自殺特攻の様な真似をシュテルマー自身がしてくるとは思わなかったからである。

「どういうつもりだシュテルマー! 俺との一騎打ちですべての決着を付けようと言うのか? それはいい、わずかながら英雄としての誇りは残っていたようだな!!」

「フッ…、貴様の首などどれほどの価値があるものか、ワシの狙いはあくまでダイハン城の軍需物資よ」

「馬鹿な…! たとえその目的を果たしたとしても、やがて引き返してくる我が軍に包囲されて終わりだ! 貴様が死んで一体何の意味があると言うのだ」

「フフ、ワシは死なんよ、いや、この身がたとえ果てようとも、我が意志は四天王どもに託してきた、四天王をすべて倒さぬ限り真の意味でワシを殺す事は出来ん」

「何と愚かな…、まだこれ以上無駄な血を流させようと言うのか! もはや貴様を殺すのに何の躊躇も無い! ここで無駄死にするがいい!! 鈴木、集束ビーム砲でコックピットを狙え!」

 ヴォルフの命に答えた鈴木はアイアンコングの頭部に照準を合わせると収束ビーム砲の引き金を引いた、このビーム砲は破壊力こそ無いが凝縮されたエネルギーによって貫通力は高く射程も長い、アイアンコングの重装甲を確実に貫ける唯一の武器である。

 ヴォルフは望遠カメラで地平線の彼方に見えるアイアンコングに向かって放たれた光の筋をかたずをのんで見つめた。
 だが、次の瞬間驚くべき光景を目にする事になった、ビーム弾が放たれたと思った瞬間、突如アイアンコングが横にずれ、ビーム弾はむなしく空を切ってアイアンコングの遥か後方へ着弾したのである。

「馬鹿な! 高速戦闘機でもあるまいにビーム弾をかわすとは、あれは人間の出来る反応では無い、奴はリミッターを100パーセント解除して超精神共鳴を起こしていると言うのか…!? そうだとしたら目立つビーム砲弾は簡単に察知されて避けられてしまう!!」

 ヴォルフの不安は的中し、その後何度集束ビーム砲を放ってもすべて軽々とかわされてしまった。

「こうなったら危険だが、アイアンコングの運動性では回避しきれない近接戦闘に持ち込むしかない…、だが、格闘戦に持ち込まれれば終わりだ、ゼロ距離まで接近されるまでに何としても倒すんだ!!」

 そう考えたヴォルフは最高速でグレートホーンを直進させた、アイアンコングとの距離はみるみる縮まっていく。
 だが、アイアンコングにはまだ大型ゾイドさえ一撃で仕留める6連発大型ミサイルがあるはずなのだが、一向に放たれる気配は無い、おそらくダイハン城攻撃の為に温存しておくつもりなのだろう。

 幸か不幸かお互い攻撃を仕掛けぬままついに500メートルまで距離を縮めた、グレートホーンの速力は130キロ、対するアイアンコングは150、ここまで来たらもう逃げる事は出来ない、格闘戦に持ち込まれたら間違いなくやられるだろう、まさに背水の陣の心持ちであった。

「今だ鈴木! 全砲門開け!!」

 ビームガトリング、リニアキャノン、収束ビーム砲、3連ミサイル…、グレートホーンに搭載されたありとあらゆる火器が一斉に火を噴いた、これを察知したアイアンコングも咄嗟に回避行動を取るが、この距離ではさすがに避け切れず、次々と被弾して瞬く間に爆炎に包まれた。

「どうだぁ!!」

 ヴォルフが勝利を確信した次の瞬間、爆炎の中からいまだ健在のアイアンコングが姿を現す、集束ビーム砲が胸部装甲を貫いたがコアまでには至らず、咄嗟に左腕で頭部と6連発ミサイルランチャーをガードしていたため、その他砲弾もアイアンコングの左腕装甲をわずかに歪ませたにすぎなかった、実質損害らしい損害を与える事は出来なかったのである。

(アイアンコング…、直接闘ってみるとなんと恐ろしい機体か、そしてシュテルマーの操縦技術、あれはこれまでの経験と執念によるものなのか…)

 次の瞬間、今度はアイアンコングの左肩部に装備された10連発ロケットランチャーが放たれる、無数の小型ロケット弾がグレートホーンに襲い掛かり、すさまじい爆炎で覆い尽くした。

 しかし、さすがグレートホーンの重装甲にはダメージは無かった、だが、全身に装備されていた火器類のほとんどを吹き飛ばされ、火力を大幅に減少させられていた。

 やがて爆炎が晴れて視界が開けてくる、そこには、眼前まで迫ったアイアンコングが、大きく腕を振り上げている姿があった。
 次の瞬間、グレートホーンの横腹にアイアンハンマーナックルが叩き込まれ、グレートホーンは20メートルほども吹き飛ばされた。
 コックピット内には先のミサイルを受けた時より大きな衝撃が伝わり、再び意識が遠のいていく。
 その薄れる意識の中、ヴォルフはシュテルマーからの通信を聞いた。

「貴様と遊んでやる時間は無い、ダイハン城を攻撃してきたらまた相手してやるゆえ、しばらくそこで寝ておるがいい」

 そこまで聞いてヴォルフは完全に意識を失った…。

ダイハン城の死闘

「………様、……ルフ様、…ヴォルフ様、応答願います! こちらダイハン城、現在謎のゴリラ型巨大ゾイドの攻撃を受く!! 謎のゾイドの攻撃により、武器、弾薬、食糧、そのほとんどが損失! 現在も暴れまわり、ダイハン城は半壊状態にあります、至急援軍を送られたし! ウギャァァァァーーーー!!」

「はっ…! しまった気絶して…! おい、応答しろ、こちらヴォルフ、応答せよ!! くそ! くそっ! くそぉぉぉーーー!! あの老いぼれめ、やりやがった!! まだ同胞同士で愚かな戦いを続けろというのかぁぁぁぁぁーーーーー!!!」

 あれから数十分後、気を失っていたヴォルフはダイハン城からの悲痛な通信によって目をさまし、悔しさのあまり何度も目の前のパネルに拳をたたきつけた。

「おい鈴木! 応答しろ鈴木!! ダイハン城が攻撃された、すぐに救援に向かいシュテルマーを討ち取るぞ!!」

 ヴォルフは背部操縦席の鈴木に向かって何度も呼びかけたが、ついに応答が返ってくる事は無かった、あのアイアンコングのパンチによって鈴木の乗っていた操縦ポッドが吹き飛び、直後横転したグレートホーンの下敷きになって果てたのであった。
 鈴木捨助29歳、幕府内にて苦境の日々を送っていたヴォルフを支えて来た有能な男で、将来国を背負って立つ人物として期待を集めていた若者であった。村山に続いて、これからのゼネバスにとってあまりにも手痛い損失となった。

「くそぉ…、鈴木まで逝ってしまったか、俺の力が至らぬばかりに、すまぬ…!! お前たちの敵は必ず取ってやる、たとえ奴と刺し違えてでもな!!」

 ヴォルフはグレートホーンのダメージチェックを行った、ビームガトリング砲及び集束ビーム砲、複合センサーユニットはそっくり欠落、その他小火器も大半が欠損、残ったのは3連装リニアキャノンと濃硫酸噴射砲のみだった、また、アイアンコングのパンチによって左わき腹の装甲が陥没してゾイドコアを圧迫、コア生命エネルギーは30パーセントダウンし、出力大幅ダウン、最大速は90キロにまで低下していた。

「まだだ、まだ戦える! アイアンコングもすでにミサイルは撃ち尽くしたはずだ、後はゼネバスの騎士らしく格闘戦でけりをつけてやる!!」

 そう決意したヴォルフは満身創痍のグレートホーンを全速力で走らせてダイハン城へ向かった。

 そして数十分後、ヴォルフはついにダイハン城へ到着する、そこで目にしたのは、これまで2か月の間必死に集めた軍需物資が燃え、あたりには破壊された大砲、手足のちぎれた兵士たちが横たわる、見るも無残な光景であった。
 そして、半壊したダイハン城へ眼をやると、もくもくと立ち上る黒煙の中、天守閣によじ登ってドラミングするアイアンコングの姿があった。

 その時、グレートホーンのコックピット内に通信が入る、シュテルマーからだ。

「ヴォルフ陛下、よく眠れましたかな? 私もたった今用事を済ませたところだ、さあ、お遊戯の続きをいたしましょう、昔も良くこうして遊んだものですなぁ、だが、あなたは一度も私には勝てなかった」

「クッ…! 黙れ!! 俺はもはやあの時の俺では無い! ネオゼネバス帝国を率いて貴様に負けないほど幾多の死線を潜り抜けて来たのだ!!」

「フフ…、そうやってすぐに熱くなりおる、そのネオゼネバス帝国をわずか10年で崩壊させてきたのは誰でしたかな、ワシにはゼネバスの名を汚したのは陛下の方ではと思うのだが、はて、ワシの目もついに曇ったのかな?」

「黙れと言っているんだ! もはや貴様の様な逆臣と話す事など無い、死ね!!」

 ヴォルフは3連装リニアキャノンを放つ、しかし、それは天守閣の屋根を吹き飛ばしたにすぎなかった、アイアンコングは砲撃をジャンプで難なくかわし、そのまま太陽を背に飛び降りてくる。

(あの反応…、奴はまだリミッターを100パーセント解除しているのか! あの老体のどこにそんな精神力が…!?)

 ヴォルフはもう一度リニアキャノンを放つが、太陽を背にするアイアンコングには眩しくて照準がうまく定まらない。

 その直後、アイアンコングはもぎ取っていたシャチホコをグレートホーンに向けて投げつけてきた。突然の出来事に回避する間もなく、シャチホコはグレートホーンの頭部にぶつかり砕け散る。ダメージには至らなかったが、ヴォルフはこれ以上ない屈辱に感じた。

 そして、アイアンコングは地響きを立てながらグレートホーンの目の前に降り立った。
 その感情を読み取れないはずの鋼鉄のボディからは溢れんばかりの気迫を感じ、アイアンコングの体を数十倍まで巨大化して見せている。

「ホッホ、ドッヂボールはワシの勝ちですな、しかし、陛下ならあんなシャチホコ難なくかわせると思ったのですが、まさかリミッターを100パーセント解除しておられないのですかな? ワシもなめられたものですな、それとも出来ないのですかな?」

「おのれ、おのれ! おのれぇぇぇーーー!! これ以上余を侮辱する事は許さん!! いいだろう、望み通り100パーセント解除で戦ってやる、だが後悔するな? こうなったからにはもはや貴様に勝機は無いぞ!!」

 ヴォルフはグレートホーンの野生体本能リミッターを100パーセント解除させた、その瞬間凄まじい生命エネルギーを感じた、そして、グレートホーンにもヴォルフの怒りの感情が伝わる…。

 「シュテルマーを殺したい!!」ヴォルフのその強い意志に答えたグレートホーンはアイアンコングを倒すべくクラッシャーホーンを突き出して突進した。

「待てグレートホーン! そんな単調な突進では…! くそ、操縦が利かない! 暴走したのか…!!?」

 真っ直ぐ突進していったグレートホーンの角を、アイアンコングはナックルの甲で受けると、軽く力を入れて跳ね除ける、軌道をずらされたグレートホーンはそのまま突進し、目の前の建物に突っ込んだ、しかし、グレートホーンの暴走は止まらず、そのまま向きを変え、再びアイアンコングへ真っ直ぐ突進していく。

「はっはっはっは! 怒り狂う猛牛ほどいなしやすいものは無い、陛下、そんな攻撃では到底ワシは倒せませんぞ?」

「ち、違う! グレートホーンが勝手に…!! くそ、止まれ、止まってくれ!!」

 それでもなおもグレートホーンは突進を止めない、無意味な攻撃が5、6回も繰り返された。

「…もう遊びは終わりだヴォルフ、やはり貴様はその程度か、お前はこれまで何度そうやって感情に流されて失敗して来たのだ、わずか数か月で人心を掌握してワシをここまで追い詰めたのは褒めてやる、その人を鼓舞しその気にさせる才能は紛れも無く帝王の器だ、だが! それだからこそ貴様は国政に口を出すべきでは無かったのだ、尊敬を集めれば集めるほど周りの人間は貴様に口出しできなくなる、貴様にはその気は無くとも、実際には無能な指導者による独裁と変わりない、貴様には国を永きに渡って存続させる才能は無い!!」

「!!!!!!!!!」

 アイアンコングは真っ直ぐ突進してきたグレートホーンの頭部を両腕で受け止めると、そのまま一本背負いの様に投げ飛ばした。数十メートルも投げ飛ばされ地面に叩きつけられるグレートホーン。

「終わりだヴォルフ、貴様の首を姫様へ捧げてくれる」

 倒れて動けないグレートホーンに駆け寄ると、アイアンコングは腕を高く振り上げて止めの一撃を加えんとした。
 その時!! 突如背部バックパックが爆散してアイアンコングがのけぞる。

 シュテルマーが後ろを振り返ると、そこには砲口から煙を上げるモルガキャノリーの姿があった…!

正義はどちらに

「おお! 来たか大田口!!」

「はっ! 陛下の危機と聞いて、完成したモルガキャノリー5機を率いてただ今参上いたしました、陛下はお下がりください、後は私が引き受けます」

 ヴォルフを間一髪の所で救ったのは、トビー高速戦隊に対抗するべく急きょ呼び寄せた大田口廉也のモルガキャノリー部隊であった。
 大田口はトユウ藩にてモルガ10機をモルガキャノリーに改造し、そのままキャノリー部隊を率いる様命じられていたが、すでに完成していた5機を引きつれてきたのである。

 モルガキャノリーは直撃すれば大型ゾイドにも致命傷を与える180mm迫撃砲を搭載したゾイドで、物量に乏しく、大型ゾイドの量産が難しいゼネバス軍において、その不利を覆す事を期待されるゾイドであった。

 その時、ヴォルフの元にシュテルマーより通信が入る。

「あれはガイロスが開発したグラインドキャノンだな? そのダークホーンの様なゾイドと言い、最も憎むべき邪悪なるガイロスの技術を使うとは、貴様にはゼネバス人としての誇りは無いのか!! いや、所詮は貴様も邪悪なる魔族の血を引くまがい物…、始めからそんな誇りは無いか、やはり貴様にゼネバスを名乗らせるわけにはいかん!!」

「黙れシュテルマー、貴様は確かに優秀な戦略家だが、その頭の固さだけが唯一にして最大の欠点だった、ゼネバス人の純血だ誇りだと、そんなものに固執して進歩のない事こそ、自ら劣等民族と認める行為であり、ゼネバスの名を汚す事になるのだ!! 余は違う、ゼネバスの名を高めるためなら何でも利用してやる、その為ならへリックやガイロスに頭を下げる事さえいとわん、貴様にそんな勇気はあるかぁ!!」

「フフ…、所詮ワシと貴様は決して相容れる事は無いようだな、ワシはこの年まで生きてみて、ただ一つ唯一絶対の摂理を悟る事が出来た、世間では正義は勝つと言うがそうでは無い、勝ったからこそ正義を語れるのだ、それがたとえ大量虐殺をした独裁者であってもな…、こうなれば話し合いなど意味を持たん、後は戦いの決着がすべてを決めるのだ」

「望むところだ、大田口!!」

 ヴォルフの号令に大田口モルガキャノリー部隊が一斉に火を噴く、しかし、先ほどの奇襲とは違い、アイアンコングはまるで砲弾が着弾する箇所が分かっているかのように砲撃を見事にかわしていく。

 凄まじい砲撃に一瞬の隙が生じた瞬間、アイアンコングの右肩に装備されたミサイルランチャーから、1本の大型ミサイルが放たれ、一瞬にして5機のモルガキャノリーを吹き飛ばしてしまった。

「フハハハ! 優れた戦略家は最後の最後まで切り札を残して…、ぐわ!!」

 その時、背後から接近していたグレートホーンのクラッシャーホーンがアイアンコングの右足に直撃、アイアンコングは仰向けに倒された。
 起き上がろうと必至にもがくコング、だが次の瞬間、突如コングの胸部に砲弾がさく裂する、それは先にグレートホーンの集束ビーム砲により装甲に穴が開いていた部分に直撃し、内部で爆発してコアに直接ダメージを与えていた。

 アイアンコングを砲撃したのは、先のミサイル攻撃を僚機を盾にして防ぎ、じっとコングを仕留める隙を伺っていた大田口のモルガキャノリーであった。

 コアにダメージを受けたコングは、なおもしばらくの間もがいていたが、やがて完全に動かなくなった、その時には最後の力を使い果たしたグレートホーンも倒れ、モルガキャノリーの砲弾も尽きていた、まさに紙一重の勝利であった。

 もしもモルガキャノリーの砲弾が、アイアンコングの装甲の傷口をわずかにでも外していたら…、まさに戦いの神が、正義はヴォルフにありと仕向けたかのような奇跡の勝利であった。

愛戦士散る

 マーダ3、モルガキャノリー4、グレートホーン1機、大小火砲十数基破壊、兵員・民間人死傷者230余名、官軍軍需物資全損、ダイハン城及びトキョウ市街の大損害…、たった1機で未曾有の大損害を及ぼした悪魔の化身、アイアンコングは倒れた。

 ヴォルフは兵士たちに命じてアイアンコングを包囲した、銃を持った兵士30名による包囲の輪をじりじりと縮めて行く。
 その時、アイアンコングのコックピットハッチが手動でこじ開けられ、中からシュテルマーが姿を現す、シュテルマーは頭にゼネバスの紋章が描かれたハチマキを締め、左手にはゼネバス刀を握り、パイロットスーツの上半身を脱いで半裸と言ういでたちであった。

 そして何より、シュテルマーの肉体は全身美しいシルバーに輝いている、ゾイド星人は闘争本能が極限にまで高まると、こうして体がメタル化するのである、だが、その輝きには種族により違いがあり、地底族、火族などゼネバス人は白銀に、風族、海族などへリック人は黄金に、魔族、竜族などガイロス人は黒鉄色に輝くと言われている。

 アイアンコングの胸部装甲の上に上り、白銀に輝く肉体を見せつける様に、シュテルマーは誇らしげに仁王立ちして叫んだ。

「見よヴォルフ、この濁り無き美しい白銀に輝く我が肉体を!! これぞ誇り高き高貴なる純血ゼネバス人の証よ、この純血は絶対に汚してはならんのだ! 貴様にはその尊さはわかるまい、まだ決着はついておらん、どちらが正しいのか、ワシがこの剣にて裁く!!」

 シュテルマーはゼネバス刀を抜き放つと、ヴォルフ目がけて一直線に走りだした、30の兵士の銃が一斉に放たれる、しかし、メタル化したシュテルマーの体はそれらを受け付けず、大きく振りかぶったシュテルマーの剣がヴォルフの頭上に振り下ろされた。

 これをヴォルフも咄嗟に剣を抜いて受け止める、それから2人は数十合も激しく打ち合った、飛び散る火花、全く容赦の無い切り合いを続ける両者の気迫に、取り囲む兵士たちもただ見守る事しかできなかった。

 やがて、ヴォルフの闘争本能も極限に達しメタル化が始まる、ヴォルフの肉体は白銀では無く、若干黒味がかった銀色に輝いた。

「フハハ! なんだヴォルフ、その醜悪な濁った銀色は!! それが邪悪な魔族の血だ、貴様ごときがゼネバスの後継者を名乗るなどおこがましいとは思わんのかぁ!!」

「・・・・・・」

 それからさらに2人は数時間にも及んで切り合った、次第にあたりは血のように真っ赤な夕焼けに包まれ始める。

 シュテルマーは全く疲れを見せず、ヴォルフの首を取らんと憑りつかれた様に剣を振るい続けた、とても70代後半の老兵とは思えない。
 「ゼネバスの純血を守りたい」「ヴォルフの首をエレナに捧げたい」この強い想いがシュテルマーに無限のエネルギーを湧き立たせていたのだ。

 やがて、先に力尽きて膝を付いたのはヴォルフの方だった。

「死ねヴォルフ! やはりワシこそが正義だったのだ!!」

 この隙を逃さず、シュテルマーはヴォルフの首目がけて剣を薙ぎ払った、しかし、刃があと十数センチでヴォルフの首に達するかと思われた時、その刃はピタリと動きを止めた。

 ヴォルフは恐る恐る目を開けて目の前を見ると、そこには5メートルはあろうかと思われる黒い大蛇に体を締め上げられるシュテルマーの姿があった。

「グアアァァ…、な、なんだこれは…!」

 苦しげにうめき声を上げるシュテルマー、しばらくするとヴォルフの目が霞んで来て、大蛇が人のような形に見え始めた。

「ああっ! 貴方は伯母上…!!!?」

 やがて人影はヴォルフの目には死んだはずのエレナの姿に見えてきたのだ、しかし、その姿は死んだ時よりはるかに若く見えた。エレナの様に見えるそれは、シュテルマーの体を優しく抱きしめている様にも見える。
 しかし、周りの兵士にはエレナの姿は愚か、大蛇の姿さえ見えていなかった、ただ、シュテルマーが突如けいれんを起こした様にしか思われていなかったのだ。

「エレナ放せ! 放してくれ!! あと少しで、あと少しでお前の敵がとれるのだ!!」

 しかし、シュテルマーの目にも確かにエレナの姿が映っている様だった、そして、エレナのようなそれは穏やかな口調で語りだした。

「もういいのです、もういいのですよシュテルマー、あなたはもう十分にやってくれました、もうお休みなさい…、私と一緒に静かに暮らしましょう、さあヴォルフ、シュテルマーを休ませてあげてください…」

「うおおおおぉぉぉぉぉーーーー!!! ゼネバス流奥義、斬鉄剣!!」

 ヴォルフ渾身の一閃にシュテルマーの体から鮮血がほとばしった、同時に崩れ落ちるシュテルマー。

「ゴフッ! …ヴォルフ、これからこの国をどうするつもりだ…?」

「…!!?」

「この島は資源に乏しく、へリックやガイロスとは到底渡り合えん、生き抜く為には他国を味方に付け、資源を得なくてはならん、その為にワシは南方大陸を支配するアーカディア帝国に根回しを続けて来た、ヴォルフ! もしも道に悩んだらアーカディアを頼れ、そして、資源は東方大陸に求めよ!」

「…なぜそんな事を俺に…?」

「フ、フフ…、ワシにはまだ四天王がいる、貴様にこの国をくれてやる気は毛頭ない、だが、優れた戦略家たる者、あらゆる可能性に対し手を打っておくものだ…、ゴハッ!」

「そうか、その言葉、確かに受け取った、安心しろシュテルマー、俺はもう妻もめとる気はないし、子孫をもうけるつもりも無い、貴様と伯母上の子ヒロトを我が子として育て、やがては俺の…、いや、ゼネバスの後継者にするつもりだ、確かに俺には忌むべき魔族の血が流れている、だが、ムーロア家のゼネバス人としての純血は守って見せよう」

 それを聞いて安心したのか、シュテルマーの表情は穏やかになった。

「エレナ、聞いての通り、俺たちの子ヒロトの命は安泰だぞ…」

 すでにヴォルフには見えなかったが、シュテルマーには未だエレナの姿が見えている様だった。

「おお…、良く戦ったと褒めてくれるかエレナ、永くさびしい思いをさせてすまなかったな、これからはずっと一緒だ…」

「安らかに眠れシュテルマー」

 ヴォルフは目にいっぱいの涙を湛えながら剣を振り下ろしてシュテルマーの首を落とした。
 こうして、人生のすべてをエレナへの愛にささげた戦士、シュテルマーは血の様に染まる夕焼けの中散ったのだった。

「シュテルマー、貴様のムーロア家に対する忠誠は確かなものだった、英雄シュテルマーは未だ健在だった、その栄誉を敬い、貴様には最後の仕事をしてもらう」

 その晩、トキョウ市街にシュテルマーの首がさらされた、約8年にも渡って絶対なる力を持って君臨したシュテルマーの死に、トキョウは歓喜につつまれ、やがて一つの時代の終わりを告げる声は国全体に行きわたった。

 2110年8月、ヘリオス島は新たなる時代の転換点を迎えた、しかし、シュテルマーの意志は未だ死なず、真にゼネバスが生まれ変わるのはもうしばらく先の事となる…。

ヘリオス島動乱(前篇) 完

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